煮詰まった水は蒸発する(↑続)


!!実は病んでます!!



「俺」が退院した後も記憶は戻らないが、レッドは変わらずにずっと側にいてくれている。
彼の相棒のピカチュウもいつも一緒に遊びに来てくれた。
「俺」の方はジムリーダーらしいが、ココ暫くは休業させられてる。
実際ははやく復帰したい。確かに記憶がないというのは大変だが、
周りへの被害や、俺のミスで他人に支障が出るのは気に食わない。
それに、一時的な記憶喪失だ。以前と同じ生活の方が記憶は戻りやすいと思う。
しかし、それでも強引な行動に移せないのはレッドのせいだ。レッドが嫌がる事はしたくない。
変わらずに接してくれてたのに仇で返すようなもんだろ。

昨日約束した時間にレッドは来た。
「よお、レッド。俺のブラッキー見なかったか?」

「……ピカチュウと遊ばせてるよ。」

「相変わらず口数すくねーな、まあいいけど」
レッドの肩はいつも片方だけ大重量だからな、ピッチャーさせたらとんでもない球投げそうだ。
とりあえず菓子でも出そうと棚をあさくってみる。

「………………」
「?」
いつもなら、無遠慮に座って無表情にお菓子を喜んでる筈だが、
おかしい。
無表情は無表情だが、なんだか疲れているような気がする。
………………

手を止め、無言で突っ立っている俺のライバルの喉が空気を震わすのを静かに待つ。

「…ねえ、」

俺の名前を呼ぶと同時に服を掴まれ、押し倒される。ほら、異常な怪力だろ。きっと俺のカイリキーにも負けてはくれないな。
押し倒された俺にレッドが跨がる。
陰る表情はとても切羽詰まっていた。

「グリーンが、」

静かに喉を震わしながらレッドが独り言の様に呟く。

「グリーンが、僕を忘れるのがいけないんだよ。一方通行で虚しいの、グリーンなら解ってくれるよね。」

眉を潜め、「饒舌なお前は初めて見たな。」というと瞳は泣きそうになりながらも、冷ややかに俺を見下した。

レッドが、懐から白く輝く、鋭利な物を取り出す。
俺んちのじゃないか。いつとりやがったんだ。

振り上げられた包丁が降ろされるまで、スローモーションのようだった。
レッドの香りも色も声も、今度は来世でも忘れてしまわないように深く記憶に刻み込んで目をゆっくりと閉じた。

「バカレッド。」

解ってるよ、お前の気持ち。
お前が気づいてなくても、「相変わらず」に気づけない位想ってくれてたんだろ。
だから、



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