レグリ



お前が俺に負けるような日が来たら俺はきっとお前に失望する。

お前には死ぬほど勝ちたいと思っているが、そう思ってる俺もいる。

だから、勝ち続けろ。



淡々と話してる自分がいた。
話している相手は、妄想の中の幼馴染みで、話している本人は妄想の中の俺。
なんて最悪な夢なんだ。
あんな夢に魘される訳ではないが、夢が表すのは自身の心理。
そしてあんな心理が現れたんだ。

まさか、自分の敗北を望むような夢を見るなんて。

起きてからはずっと気分がよくなかった。当然だ。見たくもない夢を見てしまった挙げ句鮮明に脳を支配しているんだ。

ああ、腹が立つ。

ポケギアが鳴り響く。なんてタイミングだ。そう思うが、気を遣うような相手ではないことを知り、ちょっとした名案を思い付いた。

「あ、先輩!?俺っすけど!」

「ゴールドか?ちょうど今あいてんだ。勝負しねぇか?」

というよりするぞ。来い。
後輩の声を遮って話を切り出す。どうせ向こうもその気で電話してきただろうし問題はないはずだ。
話が早いっすね!なんて言われるが、すまない。俺はお前が勝てないのを知ってて利用する。まあ、どうせ今の内だから良いだろ。



「今日のグリーンの戦い方、なんていうか、狡いわね」

カスミのぼやく声が聞こえた。
ああ、俺のボロ勝ち。レベルもだが、作戦でゴールドが為す術すらないようなバトルだった。非常に清々しい。
しかし、胸のむかむかが消え去るわけではなかった。
それはゴールドがもうすぐ俺を抜いて届かないところへいってしまうのが解っているからか、はたまたあの夢か。

「もどかしいなー、」

「何がっすか。」

なんでもない。
負けて不貞腐れているも、心配してくれる後輩に返事と共にサイコソーダを渡す。
横に座って息を白く吐く。
道場からの明かりが吐息の白を際立たせた。

この心に渦巻く感情とは裏腹に星空は澄んでいた。

「今日は付き合ってくれてありがとな。」

上を見上げたまま呟けば、「誘ったのはこっちなんすけどね。」なんて、
俺の胸中を悟ったような優しい笑みで顔もコチラに向けずに返された。

シロガネも今は、この夜空が見えるのだろうか。
見えるなら、

きっと会いに行けるのに。




この夜空を理由に会いに行けることはきっとない。






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テーマ「人外ファンタジー」
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