しこり




パブロフの犬がそうであるように、魚が決まった動きを連鎖して行う鍵刺激のように、
グリーンにとってそれは、ごく自然で当たり前の事だった。

レッドは、そんなグリーンを見て「グリーンって、博士の召し使いみたい。」と形容した。レッドに悪意はなかったし、グリーンもそんなことは解っていたのだが、この時ばかりはレッドを敵と認識した。
グリーンは、自身がレッドの言われた通りであることをすでに認識していた。
自覚している弱味を指摘されて楽しくなかったのだ。

グリーンは博士と目があったことはあまり無い。
元は、両親不在の中、変わらずカントーで過ごしたいと願った兄弟を引き取ってくれたため、迷惑をかけられないお手伝いしなくてはと、使命感によって動いていたのだが、
あまり自分を見ない祖父に対してこっちを向いて欲しいという感情が増大していった。
だから、グリーンは祖父からの「お願い」を聞いていたのだ。コンプレックスから来る行動を指摘されたため、グリーンはレッドに対して敵意を表した。

そして、レッドの指摘はグリーンの中にひずみを生み出す。
指摘されたとき怒ってそのまま帰り、翌日からまたいつもと同じ通りではあったのだが、内側に出来たひずみは中で停滞し、循環し、肥大して外に影響を伝える。
レッドに指摘されて以来、グリーンは博士に「お願い」されたときに、その事が頭を掠めるようになった。そして疑うようになってしまったのだ、本当に自分がしたくてしているのか、考えているのか、正しいのか。

グリーンには、何が正しいのかなんて解らない。解らないから困っていて疑うようになったのだ。
結果、グリーンは歪なものへと醸成されていった。
第一に、元から素直に思っていることを言うのは得意ではなかったが、嫌みが加わった。皮肉めいた口振りに、同年の子供は嫌な奴だと彼を遠ざけ、大人は可愛いげのない子供だと、距離を置いた。グリーンは寂しかったが、素直に淋しいと言うことはなかった。
第二に、表情を偽るようになった。
嬉しそうにするのは相手より優位に立った時、まるで俺は間違っていないと自身を鼓舞し安心させようとするときのみで、相手からの好意には素直に嬉しそうにしなくなった。悲しいという感情すら、誤魔化すようにひた隠しにして挑発的な笑みを換わりにはっつけた。誰も気づかない触れてこないことを良いことに、グリーンは気付かない振りを続ける。

それは、グリーンが14歳になった今も継続されている。

誰も、グリーンからの声無き声には気付かないまま。




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テーマ「人外ファンタジー」
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