美大生グリーン8
目が覚めたら自分の家で、自分は自分のパジャマを着ていた。この事は通常ならば一切おかしな点はないのだが、昨日俺は帰ってきた記憶がない。
夢にまで見てしまった内容が実際にあったことなのかも解らない。夢の中で俺は服を剥がされ、ゴールドという年下に好き勝手に犯された。まったく気持ち良さは伴ってない、相手の発散の為の行為。
思い出しただけで鳥肌がたつ。
「グリーン、あれゴメン起きてた。」
「レッド…?」
いや、同居してるから当然は当然。レッドがいるのはなんらおかしくはないのだが。
俺はどうやって帰ってきたのかも、昨日、どこまで、レッドは知ってるのか?
レッドに俺は電話をした気がする。実際掛かったかどうかは解らないけど、知ってたらどうしよう。レッドを見ても、表情からは伺い知れない。
聞こうにも、聞く勇気がない。
「ほら、月曜なんだからいつまでも寝てたら遅れるよ。学校まで送るから。」
「え、あ、おう。」
確認すれば時間はレッドが家を出る10分前で、俺が普段家を出る時間はとうに過ぎていた。
「やっべ、」
「グリーン、ソレ女物靴下」
今日のレッドは少し様子がおかしかった。朝、いつも通りの時間に間に合わせたは良いが俺を送ったから時間に余裕はなかったハズだ。なのにレッドは俺が扉の向こうに消えるまで車を発進させなかった。
大学もバイトも今日はなかった?いや、通学用にしているカバンだったから大学はあるはず。
朝から製作で考えながらキャンバスに筆をのせていると後ろのよく喋る女子が昨日の合コンは最悪だったと嘆いてるのが聞こえてきた。
俺は反応するでもなく画面に集中したまま。逆算していくと次の作品展まで時間がない。
今描いてる作品は、大作とは言わないものの割と大きな作品で、どこも手を抜きたくなかった。完成は近いが、当然出展するなら賞が欲しい。最悪でも入選させて、見せたい奴がいるから。
そこではたと手は止まった。
コレは、ただ単純にアイツを喜ばせたかっただけ。
だけど昨日は、ゴールドとかいう奴にイかされた時、俺はレッドに助けを求めて、俺は、
レッドを求めてた。
助けてほしいという感情もあったが、レッドに抱き締めてほしいとも思ってた。
我ながら女々しいとは思うが、思ってしまったのは事実。
レッドは好きだ。迷わずにソレは言える。
ただ、その好きという感情が解らない。
悩んでいても仕方がないと思考を振り切るように頭を振る。
今は絵を完成に近づけるだけ。
本当は、
解らないと感情を誤魔化しているだけ。