美大生グリーン5
それにしても、柄が悪くついでに頭も悪そうだから期待はしてなかったのだが、どうやら今までの奴よりもコイツは紳士らしい。
見た目が教養の有りそうな奴もいくらかひっかけたが、ココまでエスコートする奴はいなかった。もしかしたら俺より気が配れる奴かもしれない。
「にしてもお姉さんも強引ッスよねぇ〜」
あーいう生真面目タイプなかなか譲らないっしょ
頬杖を突きながらまじまじと俺を眺めてくるゴールド。若干の呆れも含まれているが気にしない。悪態はレッドに吐かれ慣れている。
「別にいいじゃないですか、彼も暇そうだったし。」
「悪くはねーっすよ、」
ヘラヘラとわらってくるのがどうにも気に食わないが、おごって貰ったパフェを黙々と食べてる俺も大概失礼なので何も言えない。
大体の男はこんな態度を取られれば焦ったり沈黙を気まずく感じたりするのにコイツは目を細めながら笑うだけだった。
店を後にしてこの後はどうするんだろうかと思案していると腰を引き寄せられ耳元で囁かれる。
「どうです?このあと、」
手が何かを求める風に俺の腰を撫で上げる。それに一瞬眉を潜めそうになるが抑え込んで笑顔で返す。
やっぱり軟派野郎かよ!
まあ、コイツのげんなりする顔を拝んだら帰ってやろう。そう思って、挑発するような瞳と共に承諾してやった。
いつもと同じホテルに到着すると俺は早々にベッドに腰掛けた。やはり、靴は疲れるのだ。足が痛い。
ゴールドが後ろ手に鍵を閉めるのが見えた。
「にしても、女装癖マジなんスねー。グリーン先輩」
俺に覆いかぶり押し倒してきたゴールドが口を開いた。今、なんて……。
驚愕しているとゴールドの手がスカートの中まで入り込み内腿を撫で上げた。
自分の名前を、本名を呼んだ目の前の男は俺の性別を知ってるってことか。しかも先輩なんて、俺はこの男を知らない。
とにかく、このままだとマズイ。俺の貞操が危うい。
「えっ先輩もしかしてソレ頑張って力んでるつもりすか」
力を振り絞ったつもりなのにどうやら効果は薄い。それどころか力の差は絶望的らしい。
家を出る前のレッドの言葉が思い出される。
「くそっ、離せ!!!!」
「お断りッス。アンタだって了承したじゃないっすか。」
確かにそうだ、この状況下で襲われましたといったところで和姦扱いされるに決まってる。地声で怒鳴ったのに離されない。やはり、解ってはいたがコイツは男色趣味なようだ。
自分で何とかするしかない。
首元に顔を埋めたゴールドが首筋に沿ってなめあげる。思わず肩を震わせ熱くなる息を漏らす。
燃えるような目頭から雫が溢れ出ていくのをなんとか堪えて、近くにおいた筈であるバッグを探す。
「ふっ、………!」
「男は狼だってよくいうでしょ?自分も男でしょうに。」
悔しくて、熱くて、声が出ない。
レッドの言うこと聞いておけば良かったと後悔しても後の祭。後悔先に立たずというけれど痛感せずにはいられない。後悔してからでは遅すぎる。
まさか、ゲイなんていると思わなくてこうなるなんて思ってもいなかった。
「あ、そうそう。俺の狙ってた子ってアンタッスよ。グリーン先輩。」
楽しそうに囁かれた声は俺の頭には入らず、ただただ嗚咽を我慢するだけだった。