美大生グリーン4




「オーキド君さ、週末空いてる?」

せっかく作業してるときにかけられた言葉に苛立った。用事があるならせめて筆を画面につけてないときにしろ。しかも、週末の話なんて製作してないときでいいじゃないか。
話しかけてきたのは確か同級生の女、先輩とかではなかったハズ。無言で睨み付けるようにそちらを見ると俺の機嫌など察してないのか話に反応したんだと思い込み勝手に進めてくる。

「今週末みんなで飲みに行こうってなったんだけど、オーキド君にも来て欲しいなって」

飲み会ってどうせ合コンか何かだろう、全く興味がない。無言のままでいると悩んでいると思われたのかまたペラペラと話してくる。

「18時に駅前の公園だから、来れなかったら教えて?」

へえ、18時に駅前の公園ね、
心の中でひっそりと笑った。そして、去ろうとする女に言葉をかける。

「予定が入ってるから、…無理だ。わりぃな、誘ってくれたのに」

小さく作り笑いを見せれば、しょげた女も少し嬉しそうに謝ってくる。確かに、俺以外の男はもさかったり冴えないしな。



そうして来た週末、いつもは朝から出るのに昼までゆっくりして着替え出した俺に同居人は目を丸くした。

「今から?…珍しい。」

そういって開いていた参考書をバッグの中にいれだす。多分、コイツも出掛けるんだろう。
本当は、あまり足とかも男ってわかるだろうから、出したくはないが、オーバニーとかで膝を隠せれば多少は誤魔化せる。しかも俺細いし膨張色履いてもむしろ女と思わせるには丁度良く見えるため敢えてオーバニーを履く。

「今から出るなら町中まで送ってくれよ。」

「男を騙す悪漢を乗せる気はないよ。」

言った途端にピシャリと言い返される。
まあ予想していたが、手酷い。思わず「ケチくせぇな」と言うとため息をつかれた。

「全く、こっちの身にもなれよ。毎週末男ひっかけて遊んで、男として気分は良くないし、しかもいつか男って張れたり、ばらしても迫ってこられたりで暴力とかもされんじゃないかって心配だし、………」

そこまで言って、レッドは嫌そうにコチラを向いた。
あー、と頭をかきながら言葉になってない事をぼやきだす。
正直意外だった。最初にレッド自身が言ったように俺よりも男に対する同情で、お前の行動はどうでもいいって感じだとも思っていたのに、
そこまで心配されてるとは思わなかった。

「とにかくっ!車では送りません!」

呆気にとられているとそれだけ言い残してさっさと部屋を出ていったレッドに、戸締まりは任そうと俺も慌てて部屋をあとにした。




多分、駅地下や周辺にいけば一人くらい釣れるだろうと思ってうろついてみたが、ビンゴ。
あまり顔を会わせたことがないが、同じ学部生を見つける。
そういうのに不慣れそうだったし、落ち着かなくて早めに来たんだろう。10分前とかでいいのに、

「お兄さん、今暇ですか?」

厚い底をコツコツと鳴らしながら近づく。気付いた男は一瞬こっちを見たがすぐに視線を逸らした。本当に対人スキルがないらしい。

「いや、この後用事が…」

「お兄さんの予定までで良いんで付き合ってくれません?今暇になっちゃったんですよ」

言えば仕方無しにといった風についてきてくれる。
今回は彼が俺との付き合いに流されて遅刻したら俺の勝ち。何に対しての勝ちかなんて知ったこっちゃない、言うなればコンピューター相手の対戦。一人遊びなんだから。


あの手この手で時間を潰させようと思っていたが、思ったより彼は律儀だったらしい。距離まで考えて待ち合わせ場所に10分前には到着するようにと道を戻り出した。今回は俺の負けか。なんとなしに公園近くまで付いていこうと思って彼と会話をしていた時だ。ここまで来ると他の美大生の連中に会いかねない、引き上げようと口を開いたところで声を掛けられる。
一瞬美大の奴かと思ったが、声が違った。聞いたことのない声。

「あんた合コンスよね?彼女も?」

へぇー、ロリータってヤツ?等とぼやきながらまじまじと見られる。合コンを知っていたが、大学でこんなチャラそうなヤツ見たことない。

「あっ、俺今日合コン一緒するそこの大学のなんすけど、ゴールドっていいます、ヨロシク。」

柔和な印象を受ける笑みは即席だろう、一瞬かいま見えた射るような笑みの方が自然だった。
ひっかけた男と握手する姿を見ながら思う。大体、彼が示した大学はお世辞にも頭が良いと言われるような大学ではない、ゴールドという俺より年下らしいコイツの格好を見れば明らかで、握手を求めたのも白々しい。
顔は悪くはないが、性格が悪そうだ。
まあ社交的ではあるし、今日の合コンではコイツを狙うヤツは何人かいるだろうな。

「で、アンタは?」

蚊帳の外となったので、さっさと帰る挨拶でもしようと待っていたが自分に矛先が向くとは。まあロリータなんて物珍しいかもしれないが。

「今日暇になっちゃったんでこの人の予定まで構って貰ってたんですよぉー。」

すかさず答えると、彼は何かを思案しながら「へぇー」と生返事を返してきた。
俺から興味がずれたのかと思い、付き合わせた男に礼を言ってその場を離れる。余った時間はどうしようかと考えながら歩いてると後ろからゴールドに声を掛けられた。

「このあとどうせ暇なんスよね?俺付き合いますよ。」

「合コンなんでしょ?良いの?」

肩を組んできて逃がさないとも言いたげだ。確かにコイツ狙いのヤツもいたろうからコイツが抜けたら合コンの冷めた空気は面白くなるだろう。だがまさかコイツみたいな遊びグセの有りそうなヤツから合コンなんて機会を放棄する理由が解らなかった。

「俺の狙ってた人が来れねぇみたいなんスよ。だからダルいんす。」




ね?付き合ってくださいよ。と眉を下げてくるコイツの手を俺が取らない訳がなかった。




─煙に巻く嘘吐き─




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