美大生グリーン3



高校の時、俺達の学校は一緒で、グリーンは水面下での有名人だった。


─合わない縫い目─


グリーンの女装癖を知ったのは高二の時。町で知らない女の子に声を掛けられて、道案内を頼まれたから教えて自分の用事を済まそうとしたとき、ふと似たような感覚を思い出して彼女に向き直った。
目を細める仕草はイタズラが成功したときの幼馴染みそのままで、そこで気がついた。確か秋くらいだ。
1年の時は違ったが進級し同じクラスになった時ハイテンションなグリーンはいなくて、おかしいなとは思いつつも俺といるときは普通だったから気にしていなかった。
目の前で笑っている女装したグリーンはヘラヘラと見たことのない笑顔で違和感を感じた。

チグハグだったんだ、何もかもが。

その頃丁度生徒会選挙がやってて幼馴染みは副会長に立候補していた。俺の知っているグリーンなら会長に立候補していたろうに選挙もなあなあに終わる副会長。チグハグすぎるグリーンが心配になって俺も生徒会に慌てて入って役員になることは出来た。
それでストーカーみたいに日中グリーンを観察してて気がつく。
グリーンはとにかく目立つことを避けていたのだ。企画などで、責任者でなく補助にグリーンの名前がある時は実質的な責任者はグリーンで、会長は殆どお飾り。というより司会進行など目立つものは会長で、その他雑務は殆どグリーンがこなしていた。誰よりもしっかり、沢山の仕事をするものだから生徒会内部では影の会長などと呼ばれたり、グリーンが補助のさいのイベントの滞りなさに関連性を見出だした者の中で名が知れていたための、それ故の水面下の有名人。

一度だけ、独り残って生徒会の仕事をしているグリーンに問い質したことがある。

なんで副会長なのか
何故週末あんな格好をしていたのか
なんで地味に振る舞うのか

そうして得られたひとつの答え。

「入りたくなかったんだけどよ、生徒会入んなかったら姉ちゃん達心配すんだろ。」

全てがおかしかった。
彼はだから仕事のなさそうな副会長を選んだとも言いたげだが、実際彼は一番仕事しているし、結局他の答えを問おうとすれば「無言で仕事をするか手伝わないなら帰れよ!」と先手を打たれはぐらかされてしまった。

だから諦めて他の友人から1年の時のグリーンのクラスがどんなだったか聞くことにした。仕方ないだろう。グリーンが変わったタイミングを知らないから最初からしらみ潰しにいくしかなかったんだ。しかし、しらみ潰しするまでもなく、早くも真相に近づくこととなる。
友人ルートの話だと、全員が仲の良いようなクラスだったが馴染めてない人がいたらしい。
それからグリーンのクラスだったとおぼしき女子のサイトを見付けては日記を意地で遡った。

なんでこの時の俺はただの友人のグリーンのためにココまでしたのか、昔の俺に訊いたところで明確な答えはないんだろう。
だけどこの時は既にグリーンが弟のようで兄のようで、とにかく友達という枠を越えた大切な存在だったからほっとけなかった。

そして読みづらい記事を見るのにも滅入っていた時、それらしいものを見つけたのである。
ソコに書いてあったのは…簡単に言えば誰かをクラス他全員でいじめている内容だった。
髪の毛の明るい彼は途中までは堪えていたが、途中からは諦めて笑うようになったらしい。

不意に、幼馴染みの笑いが重なった。





答えは訊けないまま




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