美大生グリーン
そこら辺のお兄さんを引っ掛ける。
まあ、割と顔がイイホウかな。自分には劣るが。
「すみません〜、お兄さんこの辺りに住んでる方ですかぁー?」
自分でもキモいと思うくらいの猫なで声。しかし、これくらいが受けがいいらしい。
ほら、こいつも優しく接してくる。予想ではコイツは彼女辺りを待ってたんだとは思うんだけど、まあこんな可愛い奴ほっとくわけ無いよな。
「この辺り詳しくなくて道に迷っちゃったんですよー、」
「でもお兄さん、彼女さん待ってたんじゃないんですかー?」
「えー、そうなんですか?お兄さんカッコいいから彼女さん待ちかと思ってました!」
案内しようかだのアイツは友達だのよくもまあそんな事言えるな。お前の一目惚れにはバッドエンドしか待ち受けてないってのにイイ気なもんだ。
「友達より優先しちゃって良いんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
いわゆる森ガールのカッコをした自分にココまで一瞬で虜になる奴もいるってのにな、
一通り知った道を案内され、カフェで奢ってもらい、世間話をポツポツと。もっと見せ処他にもあるだろなんて言わないでおいてやる。
そうして時間を測りながら、こっちには何があるんだ行ってみていいかと誘導して風俗の通りにでる。
ここで予想通り男は肩に手を回してきて半ば強引に事を進めようとしてきた。
それに敢えて流されてやる。
チェックインしたホテルは当然そっち系で、ベッドに座り、彼が服に手をかけた所でゲームクリア。哀れな尻軽男にネタバレをしてやる。
「あ、俺男だけどいい?」
地声で問いかけウィッグをぬげば、
固まる男。それはもう傑作なまでの固まり方だった。そいつの周りの時間だけ止まったみたいな。
さっさとロングスカートをぬぎ、下に履いていたパンツの折っていた裾を戻す。アウターも脱いでインナーとして着ていた服だけにすればもうカジュアル系男子。顔のメイクは女の子に見える程度にはしているが、まあ顔が良いぶん薄くて済むわけだ。
げっそりした表情の男は放っておいて扉にてをかける。文句なんて言われない、誰も自分女の子ですだなんて言ってないし。身長高めの女と勘違いしたんだろう。
外の空気を吸い伸びをする。実家があるところのような綺麗さはないが、「遊び」が成功した後の空気はやはり何度吸ってもおいしい。
携帯電話を取りだし幼馴染みに電話をする。
すると数コールで出た彼は第一声が「男の人可哀想でしょ?」なんて、流石。
しかし、そういう彼の言葉に棘はなく、むしろ俺が見守られているような気持ちになる。
「騙される奴がわりい」
笑いながら言うと彼は小さく笑い俺の居場所を訊いてくる。
伝え終わり残りの時間はどうしようかなんて考えていると目の前に見慣れた車が止まった。
「やけに速いんじゃねーの」
「そこの喫茶店にいたからね」
どうせこんなことだろうと思って、目を細めながら言うレッドは多分俺がまた女装して遊んでるのを予想して車で外出して、予想が当たったのが嬉しいんだろう。
「寄るとこない?」
「あー、コンビニのデザート食いたい。」
「太るよ?」
「絵とか脳ミソ使うから良いんだよ。」
「そしてその技術を女装メイクに使うわけか。」
たまにこう、いったい所を突いてくるんだよなコイツ。まあ、だから俺に食われないんだろうけど。
「まあな、」
適当に返事を返し、心の中でそっと言葉を付け足す。
お前はそのまんまでいろよ、じゃねーとお前まで食い物にしちまう。
コレを言ってしまってはつまらないから口から出ることはないんだけど。