笑顔ゲーム
グリーンはよく笑っていた。確かに、前からグリーンはく笑っていた。けれど、今は困ったように笑い、呆れたように笑い、嬉しそうに笑い、楽しそうに笑い、泣いているように笑った。
わかりやすく言えば、今の彼は感情表現が乏しくなった。
前にリーグ関係の人に呆れたように怒られているところを見た。
「笑って…あなたには怒られている自覚は有るんですか」
と言われたときもグリーンは困ったように「すみません」と言って笑っていた。
なんでだろ、
なんでかな、
わかんないや
僕は感情表現が苦手だが、怠ったことはない。そんな僕より感情表現が乏しいなんて異常。しかもあのグリーンがだ。
あの顔面に張り付いた、感情をひた隠しにしている笑顔が痛々しくて、ただただ不愉快で、ただただ腹立たしかった。
なんで感情を隠すんだろう?
なんでだろ、
なんでかな、
わかんないや(笑)
そういえばいつからだろう。グリーンが他の表情をしなくなったのは。旅しているときは、笑っていたな。でも、怒りもしたし、僕に隠れて泣いてもいた。とにかく旅中のグリーンは豊かな表情を持っていた。
だが、シロガネから降りて久々に会った彼は既に笑顔しかなかったと思う。新しい記憶の中に笑顔以外のグリーンはいない。
なにがグリーンをそうしたんだろう。
なんでだろ、
なんでかな、
わかんないや(爆)
その腹に据えている、燻った感情はなんなんだ。
その答えが気になった。
だから、珍しく問い質したのだ。
話を逸らそうとすれば「答えになってない」といって強制的に戻し、向こうが怒ればこちらも怒り、壁際に追い詰められている彼の方が圧力のかかり具合はあるんだろう。
とにかく、逃げ出せない状況で問い質した。
そして紡がれた彼の答え。
「お前達がそうさせたんじゃねぇか…。」
「……?」
「そうさせたのはお前等だろ!なら、俺を笑顔以外にしてみろよ!!」
彼は、怒りながら泣いた。初めて見る涙。嗚咽も溢さず、ただ静かに流れていくソレを追う。怒りながら涙を流しているグリーンは、やはり笑っていた。
僕達のせいで彼は顔面から笑顔以外を取り去ったという。だが僕には全く覚えがない。何が彼をそうさせたんだろう。
なんでだろ、
なんでかな、
わかんないや!
だったら、笑顔以外にさせてやろうじゃないか。面白い。
僕がこのゲームに勝ったとき、グリーンはどんな表情をするんだろう。
ああ、楽しみだ。
このゲーム、僕が勝ってグリーンから笑顔以外を引き出してやる。そう決めたときの気の高揚は、絶対グリーンに勝ってチャンピオンになってやると旅に出たときのようで心が躍る。
「その笑顔、絶対崩してやるからな。」
感情の高ぶりをそのままにグリーンにニヤリと笑いかける。
すると、グリーンは諦めたように優しく、
「お前がそんなんじゃ、俺の笑顔は崩せねーよ。」
そう言って、静かに笑った。