いきみち(マフィアパロ)


祖父は父さんが嫌いなせいか似ている俺を勘当し
姉ちゃんは知らされていないのか俺を行方不明だと思っているらしい。

正直男色趣味なんて気持ち悪い。

だが、俺はそんなマフィアのボスのもとへ父さんに売られてしまったのだ。
父さんはそのあとさっさと蒸発した。だから怒りの捌け口も見つけられず俺は塞ぎ込むしかなかった。

俺の何を気に入ったのか知らないが、妻である赤毛の女よりも俺を側においた。
俺は赤毛の女から嫌われていたが、俺がもとから閉じ籠っていたため何もしてはこなかった。

そんな日々が続いていたある日、俺は寝室へ向かっているときに背後から呼び止められた。
しかし、俺が応じないのはいつものことで、そのままドアに手をかければ肩を掴まれる。振り払おうと少し視界に入れれば懐かしい姿がそこにたっていた。

「レッド……?」

ニコリと返す幼馴染み。しかし、どうしてココにいるのかわからない。

「逃げよう」

信じられない言葉を発し、手を引かれた。走っている最中に教えてくれた話だと、レッドは俺が売られ連れていかれるところを目撃していたらしい。そして、こうするために、ファミリーになったと、
ソレを聞いて俺はこの無我夢中に走ってくれているレッドのことを

ああ、好きだなあ

と感じた。
ソレが俺を買った男と同じ感情かどうかはわからない。だが、俺は確かにコイツを愛していた。

その時だ。
破裂する音が背後で響く。直後足元で弾ける赤。
レッドが崩れ落ちる。引っ張られていた俺もつられて転んだ。

「このためだけに入るとは驚かされました。」

淡々と言うのはアイツのファミリーの男で、あまり良くない方面を担当している奴だ。ライトグリーンの髪の毛とはみあわない性格で、重い上に粘着質。
ボスの男に世話にはならない方がいいと言われていた人物。

「なんのつもりだ…!」

「ろくに口をきいたと思えば、…オメルタを破ったのです。当然の報いでしょう。」

もちろん、アナタも。
そういってレッドを貫いた銃口を向けられる。
オメルタとは暗黙の了解、破ってはいけないルール、らしい。

破った者は例えボスでも幹部でも死を以て償え。

結構なことだ。レッドは死を覚悟して助けに来てくれたんだ。俺だって、

「レッドと死ねるなら本望だ。」

レッドを抱き寄せると痛みに呻きつつも、レッドは震える手を回してくれた。
しかし、

「誰が殺すと言いました。」

あなた方は殺したところで償いにはならない。
そういった目の前の奴の言葉に視界は絶望で塗り潰された。





やめろ、やめてくれ頼むもう逃げないからずっとボスの側にいるからやめてくれやめてやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!

「っふ、んーんーっ!」

声にはならない。
猿ぐつわが邪魔をして来る。
手を伸ばそうにも手すりにくくりつけられた腕が動くことはない。
近づこうにも椅子にくくりつけられた足がその場を離れることはない。

第一俺とレッドの間の防弾ガラスが接触を拒んだ。

ガラスの向こうに映る世界はレッドがなぶられる姿。
蹴られ、痛みに噎せ返り起き上がることも出来ないレッドにふりかかる暴力の雨。
俺が座らされている拷問椅子の痛みよりもレッドの受けている痛みの方が明らかにでかい。
与えられる飯を食べようにもレッドは吐いてしまい、俺は口に入れるだけで喉を嚥下していくことはなかった。
日に日に衰弱していく俺達にいつしか腕から管を通して栄養が送られるようになる。ソレは喜ぶべき筈のものなのにそれすら俺達にとっては拷問だった。

レッドは体を動かすことすらままならなくなり、俺は猿ぐつわによって最後の自殺手段も絶たれ、心を閉じ込めるしかなくなった。



ボロボロの二人を見る二つの影は言いました。

「お前は俺のために死ねるか?」

「いや、あり得ねーな。」
「だって、死んだりああなったりしちゃ元も子もねーだろ?お前のために俺は生きるよ。」

「そうだな。」



生きているくせに動かなくなってしまった二人は今日も地下室で静かに生きるのです。



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