レグリ



花を取りに行っていたのはわかる。いや、そのあとの流れだって普通なら採ったら帰る、それだけだ。あってもお店に寄ったり、寄り道する程度だ。だから、今の状況は非常におかしいし、不愉快だし、理解の及ぶものではない。

「…どけろ、レッド。」
「やだ。」

何故なら、今俺は即答してきやがった人物、レッドによって花が群生する地面に押し倒され、押さえつけられてるからだ。しかも、レッドの奴、いきなり来たと思ったらズケズケと入ってきていきなりこの行動を取ったのだ。理解不能である。いきなり過ぎて柔らかな土と石と固い土が混在する地面に頭を打った俺は、呻いた後レッドを罵り怒声を浴びせてやったのだが、いかんせん怯む様子もどける様子もないレッドに暫く観察される状況が続いていた。
そもそも、なぜ花を採りに来てたのかって、普段からお世話になっている人にお礼をしたいから摘んできてって姉ちゃんに頼まれたからなんだが、花をあげる相手にはおれ自身感謝してるし、っていうかレッド自身感謝すべき人物の筈なんだが。というか、なぜ俺は押し倒されているんだ。何か俺に対してイラついてるかもと考えたがいつものポーカーフェイスらしきものを決めてるだけで機嫌は悪くなさそうだ。むしろどちらかと言えば良さそうに見える。だったら何なんだ。
顔の真横にある花の匂いがしてきてそろそろ切実にどけて欲しかった。花の匂いや、ましてや花が嫌い、そういう訳ではないが正直苦手だ。リーダーの就任時に祝いで大量の花束が送られてきた。それはもうリーグ関係者や、会ったことすらないイッシュ地方のチャンピオンまで、とにかくいろんな人から送られてきた訳だ。最初は純粋に嬉しかった。しかし、家やジムいっぱいに飾られた花は独特の甘い匂いを撒き散らし、埋め尽くした。そして俺はその強烈すぎる匂いに倒れたという訳だ。
もう一度どけてくれるよう、ていねいに頼んでみるが当の本人は知らんぷり。ならば、力ずくでと思い、腕に力を入れるが、山で引きこもりをしている奴にジムに引きこもる羽目となっている俺が敵うわけもなくビクともしない。少し位動いてもいいだろ。

イラつきが徐々に募っていくなか、遂に自らレッドが口を開く。

「花、花畑にグリーンが寝そべってる。」
「は?」

「スッゴいファンシー…襲って良い?」

「ふざけんな!」

そして生まれてこのかた柔道なんかしたことはないが、巴投げといったか、とにかく投げ技が綺麗に決まり、見事大空をバックに宙を舞った後レッドは背中を花畑に叩きつける。
その時花がひしゃげたが俺は気にせず言葉を続けた。

「そういう事はやること終わらせてからにしやがれ!」


打ち付けた背中がよっぽど痛かったのか、地味な痛がり方をしているレッドに叫んで俺はとっとと集めた花を持って花畑から去っていった。


「それって………」



今は自分で理解しやがれ!ただし、上は俺が頂くからな!!





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