真逆に居座るとある住人 | ナノ


目を開けると、目の前は真っ白だった。
「ダンブルドア!目を覚ましたようですわ!」
…ダンブルドア?
その名前は大好きな本の登場人物だったはず。
そして今聞こえなきゃいけないのはカタカナの名前ではない。
「あなた、大丈夫?自分が誰だかわかる?」
すごく焦った様子で医師らしい人に聞かれる。
「あぁ…はい。でも、ここは…」
**がよいしょ、と上半身を起こすと、どうやらここは保健室のようなところらしい。
そして医師の隣には…真っ白い髭を蓄えた不思議な格好をしたおじいさん。
「ここは『ホグワーツ魔法学校』じゃよ。なぜ君がここにいるのか、説明できるかの?」
ホグワーツ、魔法学校?
それは実際には存在しない、架空の場所なはず。
という事は目の前にいるのは、本当にダンブルドア?
ウーン、と**が頭の中で意味の無い状況整理をしていると、す、と目の前にチョコレートが差し出された。
顔を上げればダンブルドアらしい人と目が合う。
「君も混乱しておるのじゃろう。取り敢えず、チョコレートでも食べなさい」
これを本当に貰ってもよいものか、と**が自分の中で葛藤を繰り広げていると、医師にチョコレートは精神鎮静の効果があるから、と言われたので有り難く貰っておいた。
一口かじるとまったりとした甘さが広がり、体が暖まってきた。
確かに少しは落ち着いたみたいだった。
「あの、私はどうしてここに」
質問に質問で返すのもどうかと思ったが、自分でも何もわからないのだからしょうがない。
「セブルスが君が湖から打ち上げられた所を助けてくれたのじゃよ」
あっ、と**は声を上げた。
セブルスという名前の彼は―**が思い当たる人物と同じならば、だが―彼女が大好きな人だったし、湖、というのも身に覚えがあったからだった。
「何か思い出したのですか?」
医師が聞く。
「私…湖に落ちたんでした。水の中は暗くて冷たくて…。私、死ぬのかと」
そこまで言うと、**はぶるっと身震いをした。
「でも君はこの学校の生徒には見えんのう」
「あ、はい。私マグルで日本人、ですから」
マグル、という言葉を発した途端、医師はどきり、という表情をしたし、ダンブルドアらしい人は訝しげに眼鏡を光らせた。
「ダンブルドア、これは一体…」
「落ち着くのじゃ、マダム・ポンフリー。君は今、マグル、と言ったな。しかしマグルは自分達がそう呼ばれておる事を知らん筈なのじゃが」
責め立てる訳ではなく、優しくさとすようにダンブルドアらしい人が聞いた。
「それは…」
**は答えようとしたが、答えられなかった。
それは本で読みました、なんて信じてくれないだろうし、だいたい彼らが本の中の人物だ、なんて事を言ってもいいのかわからなかった。
でもこのまま黙っていても何も解決しない。
そう思った**は話す事にした。
「私、本で読んだんです」


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