short | ナノ


「こんなところで何しているの」
ぬっと出てきた顔に、僕はぎょっとした。
「いや、これは」
「まあ、こんなに天気も良ければ、狭い教室よりもずっと気持ちいいわよねえ」
そう言うなりホグワーツ新任教師であるはずの彼女はごろん、と僕の横に寝転がった。
てっきりサボタージュしていることを咎められるとばかり思っていた僕は、情けないことに鳩が豆鉄砲をくらったようになってしまう。彼女の言う言葉に皮肉は一切込められていないように思えたからだ。
「でも意外ねえ。ミスタースネイプはもっと真面目な生徒だと思っていたのだけれど」
くすくす、とおかしそうに笑いながら言われたものだから、僕はむっとして
「僕がサボタージュすることがそんなにおかしいですか」
と聞くと、彼女は気分を悪くした様子もなく、
「ずーっと閉じこもってるよりも、たまに息抜きした方がいいのよ」
と言うと、そのまま気持ち良さそうに目を閉じてしまった。

「ミスタースネイプも、猫背で本ばっかり読んでないで、わたしみたいに寝転がってみなさいよ。気持ちいいわよ」
そういう彼女は、目を閉じながら風に髪をそよがせていた。大きなお世話だ、と僕は思ったが、それを見た時、思わずその柔らかそうな透き通った髪に手を伸ばしていた。
想像通り、猫のように柔らかな髪の毛が指の間を流れてゆく。光が当たり、黄金色に輝く髪は秋の小麦畑のようだった。
「なあに?」
眩しそうに目を開けた彼女を見て、僕は慌てて手を引っ込めた。
「すみません」
そう言うなり僕は本を閉じ、城まで一気に駆けていった。

珍しく長い距離を走ったせいで、スリザリンの薄暗い談話室に似つかわしく息はあがり、頬は上気し、動悸はおさまりそうもなかった。右手を見れば、先程の柔らかな髪の触感が残っていた。恐らく動悸がおさまらないのは久しぶりに走ったせいだけではないのだろう。



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