short | ナノ


あれから一ヶ月間、私はずっとリリーにくっついて歩き、シリウスにくっついて歩き、ジェームズにくっついて歩きだった。
つまり、スネイプと極力顔を合わせないように努めてきた訳で。
始めリリーには怒られたけど、半月もすると諦めた様に放っておかれた。
「あんなに喜んでたのに、どうしたのよ」
から始まり、
「告白されたのに避けられてるセブの気持ちも考えなさい!」
がピークで、
「何を言ってもダメなのね、ホワイトデーまで好きにしなさい」
が最後だった。
確かにスネイプの気持ちを考えれば申し訳無く思ったけど、あれからどうしてもスネイプに近付くと足が反対の方向に向かってしまった。
正直、たまに誰か(多分スネイプ)の視線を背中に感じる事はあったけど、振り向いてスネイプだったが最後、絶対それ以上に彼を傷付けてしまう。
シリウスやジェームズは私とスネイプがケンカしてるって勘違いしてるみたいだけど、これ幸いとばかりに悪戯に付き合わされた。
元から私とスネイプの仲が良いのが気に入らなかった二人のテンションの上がりようといったら。
「**、今から廊下に仕掛けに行くぞ」
「フィルチの奴、絶対腰抜かすぜ」
二人ともローブの内側に何かちらつかせてるけど、今晩はそんな気分じゃないの。
「だからリリーんとこ行くね」
だって今日って実はホワイトデー!
イギリス人のシリウスとジェームズが知ってるはず無いからしょうがないんだけど。
背中に**でもセンチメンタルになるんだな、なんて酷い事が聞こえたけど、気にせず一人で談話室に帰った。

ホワイトデーといっても今日だって私はスネイプを避けてしまってるし、もしかしたら一ヶ月も経ってスネイプは忘れてるかもしれない。
でも何事にも律儀なスネイプが忘れているはずが無かった。
太った貴婦人の肖像画が目に入った時、その端にはスネイプがいたんだ。
スネイプは壁に寄り掛かり、明らかに誰かを待っていた。
私の中では「戻ってシリウスとジェームズに加わろう」という私と、「黙って肖像画まで行って何も無ければそのまま談話室に行けばいい」という私の葛藤が繰り広げられていた。
「でも後から行って、フィルチと一緒に巻き込まれたら嫌だし…」
「**、いるのか?」
いきなりスネイプに声を掛けられ、思わず手で口を塞ぎながら固まってしまった。
振り向いたら絶対スネイプは怒ってる。
それは分かっていたけど、私が悪いんだから、覚悟して振り返る。
と、彼は安堵の表情で私を見た。
「怒ってないの?」
「初めはな。でもエバンズから聞いたんだ。お前も好きでこうしてる訳じゃないって」
「リリーったら、そんな事言ってたの」
呆れられたと思ったのに、やっぱりリリーはリリーだ。
「それで、バレンタインのお礼と返事なんだが、」
「言わないで!」
スネイプの言葉を遮るように私が叫んだものだから、スネイプは怪訝そうに片方の眉を上げた。
「今日、返事をすればいいんじゃなかったのか?」
「もういいのよ、本当。ごめんね」
「おい、**」
そして私は結局スネイプの言葉を最後まで聞かずに走り出した。
何も考えずに走っていたのに階段に引っ掛かったりにピーブズに会わなかったのは奇跡だった。
私は消灯時間が近いにも関わらず空き教室に入り、そこでやっと落ち着いた。
「あぁ、また逃げちゃった」
机に座り、私は手で顔を覆った。
そろそろ消灯時間を過ぎる頃だったけど、リリーに怒られるのは目に見えてたし、談話室に戻る気にはなれなかった。

どれくらいここにいるんだろう。
三十分、いや一時間かもしれない。
すると、遠くから足音が聞こえてきた。
フィルチか、はたまた見回りの先生か。
ドアに手が掛かる音がし、そこに現れたのは――息を切らしたスネイプだった。
「どうして」
「どうしても何もあるか。どれだけ探したと思っている」
そう言うとスネイプは腕時計を確認してため息をついた。
「15分過ぎた」
「何が?」
恐る恐る私が聞くと、スネイプは私を睨みながらぼそりと言った。
「14日が、だ。もう日付が変わったじゃないか」
「ごめんなさい、そんなに長く探させて」
「そういう事じゃない!」
珍しくスネイプが大声を出したかと思うと、ぶんぶんと頭を振り、私を見た。
「僕は**が好きだ」
突然の返事に私は相当なあほ面になっていたに違いない。
「バレンタインが終わってからお前に避けられて、僕はずっとこういうつもりだったのに、何度よそうと思った事か」
「本気で言ってるの?」
「本気じゃなかったらこんなに探すもんか」
恥ずかしそうにスネイプが横を見た時、私は思い切りスネイプに抱き着いた。
あまりにいきなりだったからスネイプが少しよろけたんだけど。
「私もっと女の子らしくする、大人しくする」
「別にいい、僕はいつもの**を好きになったんだから」
そう言ってスネイプはぎこちなく頭を撫でてくれた。



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