short | ナノ


今私はスネイプに睨まれている。
というか、呆れられてるの?

一週間前から女子も男子もみんなそわそわする―のは日本だけの話であって、ここイギリスにあるホグワーツ魔法学校でバレンタイン一週間前からそわそわしていたのは私だけだった。
もうイギリスで過ごして五年も経つ訳でそんな習慣の違いはわかりきっているのだけど(初めはびっくりしたものだった)、五年目である今年のバレンタインは日本人らしく日本式バレンタインをおくろうと思っていた。

朝食の時大広間でスネイプを見つけては見つめ、廊下で見つけては見つめ、図書館で見つけては見つめる。
とうとうそんな私の行動が気に障ったらしく、ずんずんとスネイプが凄まじい形相でこっちに来た。
ヤッタ、渡せるチャンス!
「お前はどういうつもりなんだ」
すんごい怖い顔で睨まれてるけど、全っ然怖くないよ私!
「どういうつもりも何もないよ!自分から来てくれてありがとうスネイプ!」

って事で今ココ。
さっきよりもすごい顔だよ、スネイプ。
きっとシリウスもこんなスネイプ見たことない!
「なんで朝からずっと僕を睨んでいて、今はそんなにニタニタしているんだ」
「あ、それ違う、私睨んでないよ!」
見つめてたんだ。
乙女チックに言ってみたけどスネイプには今日の私の可愛さがわからないみたいで怪訝な顔をされた(ひどい!)。
「じゃなくて!これを渡したかったの!」
かなり前から考えて昨日徹夜して作ったお手製チョコケーキ。
**渾身の出来!
チョコレート色の大きな箱に可愛くピンクのリボンでラッピングされているそれを見て、スネイプは目を丸くしていた。
「これ、お前が作ったのか?」
「もちろん!こう見えてもお菓子作りだけは得意!」
珍しいものでも見るように、箱と私を交互に見る。
それってちょっと失礼じゃない?
「お前、こんなの渡して回ってるのか」
「さすがに一つしか作れないわよ!」
言ってからしまった、と思った。
でも言ってしまった言葉と食べてしまったチョコレートは返ってこない、後の祭り。
「一つって、これがその一つ、なのか」
「あぁもう!そうよ。話せば長くなるんだけど。私、今年は日本人らしく日本式のバレンタインをしようと思ったの」
「日本のバレンタインはイギリスとは違うのか」
「イギリスは男女関係なくお世話になってる人とかに渡すでしょ?でも日本は女の子が好きな人にあげるの!」
スネイプがぽかーんとあほ面になってる。
普段なら結構傑作なんだけど、きっと私も同じようなもんだろうから何も言えない。
穴があったら入りたい、というかこんな事しようと思ったあの時の自分を殴りたい!
「日本では贈られた側はどうすればいいんだ」
どうすればって…あれ、これは!
真面目な顔だけど上機嫌なスネイプになってた。
「来月の十四日のホワイトデーにキャンディーのお返しと一緒に返事を下さい!」
それだけ聞くと、スネイプはさっさと帰ってしまった。
でもまさかさっき見えたのはスネイプの笑顔?!
これは早くリリーに報告しなきゃ!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -