short | ナノ


カリカリ、と羽ペンを走らせる音が急に止まった。
「あの、先生」
それを言ったきり**は何も言わず、ただスネイプを見ていた。
痺れを切らしたスネイプは少々苛々しながら何だ、と返した。
「いえ、何でも」
と**はスネイプに満面の笑みを向け、また羽ペンを走らせ始めた。
何だったんだ、と拍子抜けしたスネイプは暫く**を見ていたが、**の髪から覗く耳が少しずつ赤くなっていくのを見つけた。
ここはスネイプの自室であり、暑くて顔が赤らむなんて事は有り得ない地下室であった。
それにスネイプが理解出来ないでいると、また**は先生、とスネイプを呼んだ。
「何だね、さっきから」
「私、今幸せなんです」
そんな事を笑いながら恥ずかしそうに言うものだから、スネイプは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「…先生もそんな顔するんですね」
「我輩の事を何だと思っているんだ。君が急にそんな事を言うからだろう、ミス**」
ミス**…か、と**は苦笑した。
もちろんその真意をスネイプは理解出来ない訳だったが。
「じゃあ、紅茶、いただけませんか?」
「…よかろう」
そういうとスネイプは無言でティーセットを呼び寄せ、紅茶を入れる事に集中し始めた。
それを良い事に**はスネイプの姿を見つめていた。
ふわりと紅茶の香が室内に漂いだす。
「私、教授がいれる紅茶、好きなんです」
「紅茶など誰がいれても同じだろう」
そう言いながらもスネイプは上機嫌だった。
「やっぱり先生の紅茶、美味しいです。あの、明日もいれてくれますか?」
そういう**の視線はティーカップに注がれ、スネイプは表情が読み取れなかった。
「あぁ。またいれてやろう」
スネイプがそう言えば、**はふふ、と笑う。

誰にも邪魔されない、私と先生だけの温かい幸せな空間。



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