short | ナノ


「もしも」
二人で並んで本を読んでいると、急に**が話し出した。
視線は本に注いだまま。
「もしも、よ。明日この世界が終わるとしたら、一日何をする?」
「もしもって…そんな事か」
くだらない、わざわざ顔を上げて損をした。
また本を読もうとすると、今度は**が顔を上げた。
「私、真面目に言ってるのよ、マジよ。あなたはどうせ生産的じゃないとか言うんだろうけど」
「わかってるじゃないか。なら何故僕に聞く?」
なんだっていいじゃない、と**は形のいい唇を尖らせた。
「ねぇ、セブは何をするの」
「別に、特別な事はしない」
そう言うと、**は意外そうにぱちぱちと目を瞬いた。
「何も?」
「あぁ、普通に勉強して普通に食事をして、普通に本を読めればそれでいい」
「ふぅん」
つまらなさそうに呟いて本に視線を戻した。
「ねぇ、そこに私はいる?」
今度は僕が目を瞬かせる番のようだった。
唖然としていると、**はぱたんと本を閉じ、そっぽを向いてしまった。
「それは、セブ一人の世界なの?」
表情は読み取れなかったけれど、それは凛としていながらも震えている、なんとも矛盾した声色だった。
「何を言っているんだ。図書館へ行く時も食事をする時も、読書をする時だっていつも今みたいに僕の隣に君はいるだろう?」
次第に**の顔は笑顔になり、頭を僕の肩に預けた。
「じゃあ私も世界の終わりの日が来ても、セブが隣にいるならいつも通りの過ごし方でいいわ」
僕はフンと言って本を読みだしたけれど、**は目を閉じていた。
寝てしまったのか、そうでないのかは分からないけれど。
そう、僕は君がいればなんだっていいんだ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -