short | ナノ


消灯時間間際、自室のドアをノックする音が聞こえた。
「どなたですかな」
「**です」
聞こえてきた愛する生徒の声に嬉しく思うが、このような時間に訪れに来た事に心の中で舌打ちをした。
そんな複雑な気持ちのままドアを開けてやる。
「もう消灯時間の筈だ」
が、と言う前に**が私に抱き着く形で倒れ込んできた。
最近あまり会う時間が取れていないからか、と思ったが、何やら様子がおかしい。
「…熱いぞ」
「せんせ…頭痛いです」
そう言って私の方を向いた**の顔は普段より赤みが増しており、若干汗も滲み出ていた。
「馬鹿者!何故我輩の部屋に来た?まっすぐマダム・ポンフリーのところへ行けば良いものを」
所謂お姫様抱っこのような形で**を抱き上げると、**はいやいやと首を振った。
「元気爆発薬飲みたくないです。…先生の風邪薬がいい」
はぁ、とため息をつくとソファーに向かい、**を降ろそうとした。
「先生、一緒にいて!」
そう言いながら**は力無く私に抱き着いた。
「風邪薬を取ってくるだけだ」
「嫌、ここにいて、ね?」
熱で潤んでいる瞳に見つめられ、**が泣き出すのでは、と思い、やれやれとアクシオで薬瓶と匙を呼び寄せた。
「これを飲んだら大人しく寝なさい」
薬瓶から掬うと、匙には深い緑のどろりとした風邪薬が。
**は大人しくそれを嚥下したが、直後激しく咳込んだ。
「先生、これ苦…」
「我輩の薬品に文句でも?」
くい、と器用に片眉を上げてみせれば、**は黙って恨めしそうな目で私を見た。
「ほら、もういいだろう。寮までは送って行ってやる」
「やっぱり帰らなきゃ駄目ですか…?」
「駄目だ。寮で大人しく寝なさい」
「どうしても?」
「どうしても、だ。さぁ」
不満そうな顔をしながら**は私が伸ばした腕にぎゅっと抱き着いてきた。
「先生ともうちょっと一緒にいたかったな」
その切なそうな顔を見て、さすがの私も胸が苦しくなった。
「…気が変わった」
そのまま**を抱き上げると自室の奥にある扉を開き、ベッドに横たわらせた。
「今晩はここで大人しく寝ていろ」
「え、いいんですか?」
「ここにいたいと言ったのは何処のどいつだ」
眉根を寄せて言うと、**は笑顔になって毛布に顔を埋めた。
前髪を掻き上げて額を撫でてやると、くすぐったそうに笑う。
「おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」



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