short | ナノ


明日も授業があるのでそろそろ寝ようとしていた頃であった。
急に暖炉の炎が燃え上がったと思ったら、そこにはかつての教え子、**が立っていた。
「教授、お久しぶりです!」
満面の笑みでカツカツと音をたてながら歩いてくる。
「急にこんな時間に何の用だ」
不機嫌そうに言えば、**は全く気にしないように私に笑いかけた。
「どうしても教授に見せたくて」
そう言うと、彼女はローブを脱いだ。
「どうですか?」
彼女が着るそれは日本の伝統的な服のようで、彼女はくるりと一回転してみせた。
とても長い袖がふわりと舞う。
「それは何かね、袖は邪魔にはならないのか」
「いやだ、教授。これは振袖といって、日本の成人式で着るんですよ」
ふふ、と笑いながら**は言った。
「フリソデ?日本の民族衣装はキモノというものでは無いのか?それにもう君は成人していたはずだが」
「振袖は着物の一種で、普通の着物より袖が長いんですよ。それに日本の成人は二十歳なんです」
で、綺麗ですか、とまた彼女は一回転してみせる。
「あぁ、綺麗だ」
「振袖だけじゃなくて、私も三年経って綺麗になったと思うんですけど」
片方の袖を上げ、それを見ながら不服そうに言う。
「誰がお前なんかに綺麗というものか。寝言は寝て言え」
フン、と鼻を鳴らして**を帰そうと彼女の背中を押した。
すると**はくるりと振り返り、真剣な顔をした。
本当に昔から真剣な顔が似合わない奴だ。
「教授知ってました?」
「何がだ」
「私が学生時代、教授の事好きだった事」
もちろん知っていた、知らない訳がなかった。
いつからか**は私に媚びを売るようになり、魔法薬学の成績もぐんと上がった。
卒業式の時、私に何かを言おうと近くまで来、そのまま帰っていった事も気付いていた。
だが、それを知っていたと言える訳がなかった。
彼女は元でも教え子で私は教授、その立場は今も昔も変わらない。
「知りませんな。さっさと帰りたまえ」
「それ、今でもなんですけど」
は、と私が言うと、**はにこりと笑ってから自ら暖炉の方へ歩いて行った。
「待て」
「もう待ちませんよ。久しぶりに教授に会えて良かったです。ではごきげんよう」
私が暖炉の側まで来た時、もう炎はいつも通りになっていた。
とても疲れた。
寝る前に紅茶を飲んで落ち着こうと思い、ソファーに腰掛けるとテーブルに小さく折り畳まれた羊皮紙が置いてあった。
自分で置いた記憶も無いので、不審に思い開いてみると、そこには知らない住所と一言が。
「これは我輩に来いという事か」
ため息をつきつつも苦笑いをしているのは年をとったからか。
**が忘れた頃に訪ねて驚かせてやろう、とその羊皮紙を一番上の引き出しにしまった。

(ive waited you for five years.
plz come to meet me next time.)




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