short | ナノ


今日に限ってあいつが来ない。
いつもならうっとおしい程について来るというのに。
グリフィンドールのテーブルに目をやると、**はブラックなんかと楽しそうに朝食をとっているようだった。
まだだ、今日はまだ始まったばかりなんだ、焦る事は無い。
待て、何故こんなにもあいつが来ないだけで焦っているんだ僕は。
「どうしたんですかセブルス、気持ち悪いですよ」
そう言われて顔を上げると、胡散臭い目でレギュラスがこちらを見ていた。
「何がだ。別に何も無いぞ」
平静を取り戻そうとし、何事も無かったように振る舞うと、レギュラスはニヤリと口を歪めた。
「ごまかしたって無駄です。僕の目だけは欺けませんよ。どうせ**の事でも考えていたんでしょう?」
「違う!」
思わずテーブルを叩いて否定すれば、周りの視線が一気にこちらに向いてしまった。
レギュラスは相変わらず僕の様子を見てニヤニヤと笑っている。
ここにいると駄目だ。
ろくに朝食もとらずに、僕は談話室へ戻った。

今はクリスマス休暇中であり、それは僕が談話室の外へ出ない限り**と会えない事を意味していた。
ぱちぱちと暖かい炎が爆ぜる暖炉の側で無気力状態になっている僕を見て楽しむ様にレギュラスが近付いてきた。
「もう僕に構うな」
「本当にですか?セブルス。僕がこれを持っていても?」
レギュラスがひらひらと振ったのは、小さく折り畳まれた羊皮紙だった。
「それが何なんだ」
苛ついた様に言えば、レギュラスはにーっと笑い、その羊皮紙を押し付けてきた。
「別に渡さなくても良かったんですけど。さすがにこの地下牢で長時間待つのは寒いかと思いまして」
今度はひらひらと手を振り、レギュラスは寮に上がって行った。
「全く何なんだ、あいつは」
はぁ、とため息をつきながらも、さすがに羊皮紙が気になったので開いてみればそこには見間違える筈もない**の字。
刹那、僕の心臓は飛び上がった。
羊皮紙を握りしめ、談話室を出れば、そこには**が寒そうに立ちつくしていた。
「**、」
「セブルス!」
声を掛ければ、朝食時は見間違えだったのではないかと思うように、いつも通り抱き着かれた。
だけどいつもの様にひきはがそうとはしない。
「あれ、セブルスがそのままなんて珍しいね。槍でも降る?」
さすがに殴ってやろうと思ったが、**はぴょん、と後ろに下がり、小さな箱を僕に差し出した。
「セブルス、誕生日でしょう?プレゼント!」
まさかプレゼントを貰えるなど思っておらず戸惑う僕を見て、**は僕にプレゼントを押し付けた。
「開けてみて!」
「あ、あぁ」
言われるがままにリボンを解き、箱を開くとそこには。
「パンツ!この前ポッターにズボン脱がされた時に灰色に汚れてたから新しいの!」
まともな物をこいつに期待した僕が馬鹿だった。
「お前はどうして!僕をおちょくっているのか!」
「返品は受け付け無いから、よろしく!」
「最後まで人の話しを聞け!」
逃げるが勝ち、とでもいうように**は全速力で帰っていった。
「朝ブラックと笑っていたのはこれか…」
「セブルス、何ですかそれは。変態ですかあなた」
いつの間にか隣にいたらしいレギュラスが僕が持っていた物を見て怪訝そうな顔をした。
「断じて違う。また**とブラックだ」
「あんなに楽しみにしていたのに残念でしたね」
残念といいながらむしろ嬉しそうな声色のレギュラスを睨むと、ひょい、と箱を取られた。
「おい、いい加減にしろレギュラス」
「セブルス、ちゃんと箱の底まで見ました?」
何がだ、と思うとレギュラスは紙切れをつまんでいた。
それを受け取り、開いてみると押し花が貼ってあった。
「これはスミレですね。セブルスの誕生花じゃないですか?」
「…そうなのか?」
綺麗に貼られている押し花を良く見ていると、文字が書かれていた。
「何か書いてありますね。ちょっと、見せてくださいよ!」
僕は絶対に見られまい、必死に隠しながら、プレゼントの件は許してやろうと思えた自分に苦笑いをした。

(スミレの花言葉は愛と誠実、私の気持ち!)




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -