short | ナノ


この世界には自分しかいないのではないか。
そう思ってしまうような静寂の中、スネイプは自室でブランデーを入れた紅茶を飲んでいた。
クリスマス休暇中という事もあり、ブランデーの量が普段より少し―否かなり多かった事には目をつむった。
コンコン
こんなに気分が良くなっている時に。
チッと舌打ちをすると、スネイプはドアの方へ歩いた。
「どなたですかな」
返事が無いのに苛立ち、ソファーに戻ろうとすると、蚊の鳴くような小さい声が返ってきた。
「**です」
ガチャリ、とドアを開ければ、寒そうにローブに身を包んだ**が立っていた。
「入りたまえ」
**を招き入れると、スネイプはソファーにどかっと腰掛け紅茶を飲んだ。
途端、**が訝しげに顔を歪ませた。
「何かね、そんな顔をして」
「教授、すごく強いお酒飲んでらっしゃいます?」
「これは酒ではない。紅茶にブランデーを垂らしただけだ」
スネイプの答え方はアルコールのせいで少しばかり子供のようだった。
その答えに**はぬっとスネイプの目の前に顔を近付けた。
ふわりとアルコールの香りがする。
「そのブランデーの量、多くないですか?すごくお酒臭いです」
「ではお前も味わうかね?」
そういうなり、スネイプは**に更に自分の顔を近付けた。
ちゅっと軽いリップ音の後、舌を絡ませる濃厚なキス。
**はそのキスとアルコールの匂いにむせ返った。
「コホ、コホッ、教、授!」
**は涙目でスネイプを睨みつけたが、彼にそんな睨みが通用するはずもなく。
再びスネイプは口づけようとした。
「も、う。ちょっと!」
スネイプの様子に我慢ならなかったのか、**はスネイプの胸板を思い切り押した。
「私はこんな事をしに来たんじゃくて!」
「ほう、では何をしに来たというのかね。我輩を拒んだのだから、それなりの理由があるのだろうな」
**に拒まれたスネイプはとても苛立っていたが、**も自分の訪問した目的が果たせず、同じ様だった。
「今日が何の日かご存知ですか?」
落ち着いて尋ねればスネイプは少し首を捻り、すぐわからん、と一言。
「もう!少しはちゃんと考えてくださいよ!」
「我輩は遠回しなのは好かん」
少し拗ねたように言うスネイプは**を抱き寄せた。
**はしょうがない、という顔をした後、ローブから杖を取り出した。
また拒まれるのか、とスネイプは身を固くした、が。
「アクシオ!」
そういうなり、綺麗にラッピングしてある小さな箱が**の手の中に納まった。
「それは、」
「お誕生日おめでとうございます、スネイプ教授。プレゼントは何がいいのかわからなかったので、無難な物を」
「…この年になってまで誕生日を祝われるとは」
そう言ってもスネイプは僅かに微笑んだのを隠しきれていなかった。
「教授、開けてください」
まるで子犬のような笑顔を浮かべて催促するのを拒む訳にもいかず、スネイプは綺麗なラッピングを解いた。
箱を開ければふわりとベルガモットの香りが。
「アールグレイかね」
「はい、そうです。たまには甘い香りもいいかと思って」
「ありがたく頂こう」
あと、と**は恥ずかしそうに言葉を濁し下を向いたが、意を決したようにスネイプに向き合った。
「何かね、改まって」
スネイプがそう言うや否や、**はスネイプに口づけた。
**が普段自らはしない行為にスネイプは目を見開いていた。
「もうひとつ、プレゼント…です」
「もう少し、頂いても?」
「…はい」
自分から口づけておいて、恥ずかしげに横を向く**をこちらに向かせ、少し覚めてしまった紅茶を飲ませた。
「このようなプレゼントがあるなら…年を取るのも悪くは無いかもしれませんな」




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