short | ナノ


雪はしんしんと降り積もり、校内はクリスマスムード一色だった。
私はそんな空気から逃げるように朝から図書室に閉じこもっていた。
何も私一人、という訳ではないのだけど。
逃げてきたはずなのに、図書室には赤と緑が居座っていた。
これじゃまるでクリスマスカラーじゃない。
「おい」
逃亡者の一人、スネイプに声を掛けられたけど、私の視線は彼には向かなかった。
「何」
「大広間には行かないのか」
そう言われて初めて本から目を外し、顔を上げた。
彼も私と同じだと思っていたのに、どうやら違うらしい。
もしくはただ夕食が食べたいだけ、か。
「スネイプだって今日が何の日か知らない訳じゃないわよね」
「何の日って、クリスマスだろう」
そうよ、大正解。はなまるをあげたいくらいだわ。
「私にとってはメリークルシミマスで、カール戴冠の日、ニュートンの誕生日、よ!!」
そんな事を急に早口でまくし立てられ、スネイプは柄にもなくきょとん、としていた。
「なんだ、お前はユダヤ教徒なのか?だいたい、何なんだカール戴冠に、ニュートンとは」
マグルの歴史よ、と一言返すと私はまた本を読み始めた。
ちなみに私はユダヤ教徒でもなく、日本人では珍しいばっちり洗練を受けたキリスト教徒だ。
「それで、お前は大広間に行かないのか」
私はパタン、と本を閉じて、スネイプに向き合う。
「あのね、我が祖国日本ではクリスマスは恋人同士で過ごすのよ!」
「それがどうした」
はぁ、と一つため息をついた。
「スネイプは知らないかもしれないでしょうけど!…私はクリスマス休暇を学校で過ごすと決めた直後にフラれたのよ」
それを聞くと、スネイプはバツの悪そうな、呆れたような、よくわからない顔になった。
「この年になって身内でわいわい過ごすのも楽しいけど…、今はそんな気分にはなれないわ」
「この年、ってお前まだ15だろう」
そう突っ込んだあと、スネイプは黙り込んでしまった。
自分の突っ込みに納得いかなかったのかと思い顔を覗き込めば、彼は何かを悩んでいるようだった。
そして意を決したように私を見つめる。
「急に、何よ」
「それは僕じゃ、駄目なのか」
そう言われた私はびっくりして目を見開いた
心なしか彼の顔が赤い。多分、私の顔も赤くなっているだろう。
「それは、告白、と受け取っていいのかしら、スネイプ」
「…それはお前に任せる」
じゃあ、と言って私は立ち上がった。
「ニュートンの誕生日をお祝いして、リンゴ食べなきゃ」
「…?取り敢えず、大広間、だ」
そう言うとスネイプは私の読みかけの本を左手に持ち、右手は私の左手に繋がれた。
相変わらずニュートンはよくわからなかったみたいだけど!


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -