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「セブルス」
呼ばれて振り返ると、初夏の風に吹かれる**がいた。
「卒業おめでとう」
にこりと笑いながらそう言う**の頬には式の最中に流していたのであろう涙の跡があった。
「あぁ、**も、おめでとう」
さらさらと風に靡く**の黒く綺麗な髪を撫でると、彼女はくすぐったそうに笑った。
「セブルスは薬学の研究職に就くのよね」
**が少し寂しそうな目でそう言ったのを僕は見ないようにあぁ、と返事をした。
「私、あなたに出会えて本当によかったわ。何より、私はあなたのおかげで成長出来た」
「僕も、**がいなければ今の僕はいないだろう」
本当だ。
胸の中の黒い塊を彼女は取り除いてくれた。
人に愛される喜び、人を愛するいとしさを彼女は教えてくれた。
「僕も**がいてくれたから成長出来たんだ」
柄にもなく微笑んでみせると、**は笑ったまま下を向いた。
「私たち、もうきっと今日を境に会わなくなるのね」
唐突に言われ、僕は何も言えなかった。
「ずっと一緒にいたのに、嘘みたいだわ」
声色は僅かに沈み、震えていたのに**は笑っていた。
「僕は、」
僕は、どうしたい?
**を笑顔にしたい。
**を愛し続けたい。
「…**の側に居たい」
僕の言葉に**は耳を疑ったようだった。
「僕は明日からも今までと変わらず、君の側に居たいんだ」
「それってプロポーズ?」
「…その判断は任せよう」
すると**はいつも見せる、誰もが幸せになるような笑顔になって僕に抱き着いた。
「私ね、子供はクィディッチが出来る程欲しいわ」
「…まぁ考えよう」
「あとね、夏には毎年旅行に行きたいの」
「それも出来るだけ実行しよう」
**が顔を上げた時見える僕の顔はきっと呆れたような困ったような中途半端な笑顔だろう。
「もちろん今言ったのは全部もっと先の話よ」
「じゃないと君の就職先も困るだろう」
まぁね、そう返事をする**はまるで夢を見ている少女のような目をして僕を見ていた。
「私があなたの収入を越えないように頑張ってよね」
「当たり前だ」
そう言うと僕たちはどちらともなく向き合って、門出に相応しい幸せなキスをした。

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アンナさん
はじめまして、訪問ありがとうございます!
卒業の甘い話という事でしたが、いかがでしたでしょうか…?
私自身来週に卒業式を控えているので、なんとなくこういうのがあったらなーという感じで書かせていただきました!
アンナさんも卒業式を控えてらっしゃるんですかね?
ここ最近、不安定な天気が続きますので、アンナさんもお体にお気をつけ下さい。

リクエストありがとうございました!


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