猫、どこかにかえる


千鶴はひじかたらに連行されて行ったが某は千鶴のいた部屋に待機(閉じ込められたとも言う)していた。
ついて行こうとしたが、ひじかたに

「てめぇも、うろちょろしてんじゃねぇよ。」

と部屋の中に放り込まれ、さいとうにピシャリと襖を閉められた。
ゆるすまじ、般若と白襟巻き。
それから大人しく千鶴の帰りを待っていた某は偉いと思う。

そして連行されて帰ってきた彼女は疲れた顔をしていたが、某を見てにっこり笑った。
良かった、最悪の結果ではないようだ。

「父様、新選組のお世話になってたみたいなの。新選組の人達も父様を探しているらしくて…。」

意外な接点が合るようだ。

「昨夜の事を誰にも言わない事と、男装を続ける事を条件に私を保護してくれるみたい。」

とりあえず一安心だ。

「…猫さん。もしかして私の事、女だって気づいてた?」

残念ながら男には見えなかったかな、千鶴。
これからはもっと上手くならないと大変だと思う。

『…千鶴の身に危険が去ったという事だし。』

某は千鶴の手に頭を擦りよせると、外に出るため部屋の中央から襖へと向かう。

襖を開ければ、廊下の壁に寄りかかっているそうじと目が合う。

「猫さん?何処に行くの?」

「…。」

千鶴が某に不思議そうに声をかける。
そうじはただ見ているだけだ。

某はさっさと地面に降りる。

「ねぇ、君。帰るんだ?追い払っても出て行かなかったくせにさ。」

そうじが睨む。

「新選組で一番偉い人はこんどうさんなんだよね。しかも君の恩人なんでしょ。挨拶もしないで帰るの?」

それは重々承知している。

「ま、待って!猫さん、私…!」

すまない、千鶴。
でも、すぐに会えるはずだ。
こんどうさんに先日に助けて頂いた礼をするつもりであるからな。

千鶴は部屋から手をこちらに伸ばすが、そうじに邪魔されているのを横目に見た後、某は屯所の外に向かって歩き出した。

何処に行くの?

どこであろう?わからない。

帰るんだ?

帰る場所なんて、無い。


―猫、どこかにかえる。


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