猫、恩人との再会。


男装の子を部屋に戻してからも続いている栓議の最中。
外が騒がしいと思ったら。

広間の外を確認しようと襖を開けた平助の足元には変な猫=B
あんなに追い払っても逃げなかったのに、いまさら逃げようとしたのかな。

襖を器用に閉めたのは驚いたけど、あっけなく平助に捕まってて滑稽だった。

「なぁ総司、コイツが昨日の夜にお前について来た猫か?」

「そうだよ。正確には、さっきの目撃者の子について来たって言う方が正しいけど。」

平助が猫を広間の中央に座らせると、しゃがんで観察しながら呟いた。

「見たことのない模様の猫だよなぁ。」

「土方さんが追い払っても逃げないとか言うからどんなドラ猫かと思ってたけどよ、まだチビじゃねぇか。ちゃんと食えてんのか?」

「おそらく生まれてから半年経ったかってくらいだろうな。」

平助と新八さんと左之さんの三人は広間の中央で逃げはしないがそわそわしている猫に興味津々らしい。
おまけで言うと一君もだけど。
でも、一君はこの猫になぜか嫌われてるんだよね。
ほら、彼と目が合うとすぐにこの猫は目を逸らしてる。
一君もなんとなく気まずそうだし。
因みに僕もこの猫に嫌われてるみたい。
なんでだろうね?
…まぁ、予想がつくからどうでもいいけど。

「なんだってこんな所を猫が彷徨いてやがんだ。総司、コイツが出ていかねぇなら屯所の中を彷徨かない様にしとけって言っておいただろうが!」

「僕は言われた通りにしましたよ?動けないように手足を縛ったんですから。」

「それについては私が解いたんだ。いくらなんでも動物相手にあれはやりすぎだったからね。」

やっぱり源さんが解いたんだ。
土方さんが舌打ちして猫を睨むと、睨まれた猫も小さく唸りながら睨み返していた。
こういう所はこの猫に親近感が湧くかな。

「野良猫にしては綺麗だしさ、どっかいいとこの飼い猫じゃねぇの?さっきも器用に襖を閉めたし、模様もそこらの猫では見たことないだろ?」

平助が猫を見ながらそうぼやくと、皆が騒ぐ中で黙っていた山南さんが口を開いた。

「いえ、その可能性については低いと思いますよ、藤堂君。」

「え、なんでだよ山南さん。」

「飼い猫なら首に紐や鈴ぐらいは付いているのではないかと。それに、なおのこと新選組の屯所にいる意味は無いはずです。」

確に、猫の首には何も付いてないし、ここにいる意味がないよね。

「野良猫にしては人を恐れず、飼い猫にしては人に慣れていない。不思議な猫ですね。何か目的があるために不本意ながら此処にいるように思えます。まるで…、」

山南さんの話を遮って、ガラリと広間の襖が開いた。

「いやぁ、すまない。待たせてしまったな。」

先ほど猫が来る少し前あたりから広間を退室していた人が帰ってきた。
近藤さんだ。
近藤さんは、広間の中央にいる猫を見て目を見開いた。
猫も固まって動かない。

「いやぁ、トシから話を聞いた時にまさかとは思っていたが…やはり君だったか!」

近藤さんが口を開いた瞬間。
猫は近藤さんの足元に駆けていった。
…どうやら顔見知りらしい。
この変な猫と近藤さんに何があったんだろう。

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