猫、武士の屋敷に上がり込む。


千鶴が目を覚ました。
彼女は猿轡を噛まされて全身縛られているし、某も手足を縛られているため無言の状態が続いて気まずかった。
なぜ、昨日の昼間に見た猫が自分と一緒に縛られて横にいるのか不思議に思っているのだろうなと考えていたところでいのうえげんざぶろう≠ニやらが部屋にやって来て千鶴と某の縄を解いてくれた。
…千鶴の手首の縄は解いてくれなかったのは仕方がないだろう。
いのうえは某の中でかなり良い人の部類に入った。
見た目と同じく対応も優しく、千鶴をキツく縛った事と某を縛った事についていのうえはそうじの事を怒っていた。いいぞ、もっと言え。
なんだかんだで千鶴は某をちらちら見て気にしていたが、あっという間にいのうえに連れられて部屋を出て行った。
よって、部屋の中に独りになった某はかなり暇である。
暇だと言っても、くつろげるわけもないので落ち着かない。
…それでも、猫は寝子≠ニも言われるぐらいなのだ。
睡魔が襲ってくる。
一晩中まともな睡眠を取れなかった某は部屋の中心辺りで香箱座りになり目を閉じた。
程なくして遠くからドタバタとした足音と千鶴の声が近づいて来たため目を覚ませば、襖の開く音と共に、

「きゃあっ!!」

千鶴が部屋に転がり込んできて、某の、真上に…。
飛んでくる千鶴の向こう側に驚いた顔をしたさいとうが見えた。
千鶴を投げたのはお前か。
そうじとは違うようだったから、苦手な部類だが安全だと思っていたが。

ドサッ

…某の中の危険人物にさいとうも追加しておこう。


−猫、武士の屋敷に上がり込む。





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