猫、朱色に浅葱をみる。
「そこにいるのは、誰?」
気づかれた?
「見てたよね?僕達の事。」
残りの二人も歩くのを止めてこちらに振り返った。
「面倒だけど、最初から最後まで見られたからには放っておくわけにはいかないんだよね。」
彼らは、猫相手にも容赦しないのだろうか。
「ほら、隠れてないで出て来なよ。」
某は諦めて、暗がりから月明かりに照らされた路上へと歩き出る。
翡翠色の瞳は某を捉えると、少しだけ驚いた様に呟いた。
「………猫?」
黒髪の美丈夫が苛立った声で茶髪に声をかける。
「おい、そうじ!さっきから何してやがんだ!!」
「だって、ほんの僅かに視線を感じてたんですよ。まさか、僕も猫だとは思わなかったし。」
そのまま二人は口喧嘩を始めた。
その間、白襟巻きの男が某をじっと見ていたが、しばらくしてその男が喧嘩中の二人の間に入り喧嘩を収めると、再び背を向けて歩き出した。
どうやら某を殺す気はないらしい。
某は、千鶴と三人の男の後ろをついて行く事にした。
時折、黒髪の美丈夫が眉間に皺を寄せ某をしっしと追い払おうとするが、こちらからすれば知ったこっちゃない。
それを見て美丈夫を小馬鹿にする茶髪とひたすら黙々と歩く白襟巻き、気を失ってはいるが無事の千鶴を見ながら某は妙に落ち着いた心持ちで歩いていた。
…満月と白雪がとても綺麗な夜だった。
−猫、朱色に浅葱をみる。
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