甘い香りと姫若子


鬼副長に部屋に連れ戻された。
拳骨をくらった頭がズキズキと痛む。

『あだだだだぁ…。』

藤堂の反応が面白くて調子に乗りすぎた。
まさか本人が来るとは。
袈裟の上から頭をさする。
いくら無礼な事をしたからって、今の私は客人に近い立場だと思うんだけど。
…容赦ねぇな、鬼副長。
調子に乗りすぎて土方に怒られたのはこれで二回目か。
一回目の時は、パニック状態の時に大事な胡蝶蓮を掴まれたりでポロリと爆弾発言をしてしまったんだっけ。

『痛てぇ。あんの女たらしめが…、女みたいな顔しやがって…。』

私自身、女たらしの男が嫌いなタイプなのだ。
土方歳三なんて、日本史上の偉人の中でその分野ではトップクラスの知名度なんじゃないか?
自分宛に来た大量の恋文を実家に送り付けたとか、奉公先の女中との話とかね。
個人的に好きじゃない。
だからなのか無意識に喧嘩売る感じになるんだよね、困った。
それにしても、土方に気に入られちゃうなんて大変だなぁ、雪村の坊っちゃん。
いや、本当に二人がそんな事になってるとは思ってないけど…。

『…坊っちゃん、かわいかったな。』

土方以上に女顔だけど、美少年だった。
外の空気を吸おうと部屋から出ていた時。
廊下の角から人影が見えて、近づいてみればひょっこりと顔が出てきたんだよね。
まさかその子が千鶴さんだったとは驚いたけど、最初に見た時、正直言って女の子かと思った。
思わずガン見しちゃったし。
だけど、新選組って男所帯だし、藤堂も蘭方医の息子≠ニか言ってたから、男なんだよね。
まだ若いし、声変わりの時期とかは体質とか色々あるだろうし。
男に見られる女がいるぐらいだ、おかしな話でもない。
それにしてもかわいかった。
礼儀正しくて、奥ゆかしいというか。
言い方は悪いけど、まさに姫若子。
土方が手を出しても、おかしくないぐらいじゃないだろうか。
…土方が、手を出してもおかしくない…。
………………。

『……これ以上は考えるのやめとこ。』

「やめるって、何を考えてたの?」

『そりゃあ、鬼副長と姫若子の今後についてですよ。雪村の坊っちゃんがいつ鬼に喰われるか心配で心配で。』

「…ふっ、あははははは!」

『あははは。ところでどちら様ですかね?』

「ッははは!…君って面白いね!あー、お腹痛い。」

今は襖に背を向けていたんだけど、振り向けばいつの間にか部屋の中に腹を抱えて爆笑している男がいた。
いやいや、お前誰だし。




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