今日は、7月7日。七夕である。



「お願いごと?」

「そう!この短冊に願い事を書いて笹に吊すと、その願いが叶うんだよ。」

「マリーは七夕、知らないの?」


私の質問に「うん。」と頷くマリー。
モモが七夕について説明をすると、マリーは目をキラキラ輝かせた。どうやら、織姫と彦星の話が気に入ったらしい。


カノとセトが部屋にギリギリ入る大きさの笹を買ってきてくれたので、それを窓の傍に飾ってみた。
窓からは月が見えて、なかなか趣がある。


「それじゃ、願い事を書こうか。」

「「「はーい!」」」


用意していた短冊を一人一枚配ると、各自それぞれ願い事を書き始めた。




(うーん、何を書こう…。)


何も考えていなかったわけではないけれど。やっぱり、何を書こうか迷ってしまう。だって、叶えて欲しい願い事なんて沢山あるんだもん。

例えば、可愛い服が欲しい、とか。料理が上手になりたい、とか。スタイルがよくなりたい、とかね。
あ、それと…もっと大人っぽくなりたいなぁ。いつも、皆に子供扱いされるし。


私が悩んでいると、カノがニヤニヤしながら近づいてきた。何こいつ、気持ち悪い。


「気持ち悪いって…酷いなぁ。」

「心読まないでよ。」

「……口に出してたよ?」


おっと、いけない。

口を尖らせ、拗ねるカノに「ごめんごめん。」と適当に謝る。すると、カノは不満そうな顔のまま、私の短冊に目を落とした。


「願い事、思いつかないの?」

「んーん。願い事は沢山あるんだけど…どれにしようか迷っちゃって。…カノは?何を書いたの?」

「僕?僕はねー。“セーナの鈍感が治りますように“!」

「……カノは、私に喧嘩売ってるの?」

「あはは、冗談だよ!まあ、本当に治ってほしいと思うけどね。」


カノは、ヘラッと笑った。私は、訝しげに彼を見つめながら、願い事を考える。

ここは、やはり無難に“メカクシ団の皆が幸せでありますように“かな?


願い事を書くと、カノは「えーつまんない。」とブーイングしたが、私は無視をする。残念だけれど、別に面白さなんて求めてないんだから。


短冊を笹に飾ろうと目を向けると、そこには既に何枚か飾られていた。私は、好奇心でその短冊を盗み見る。

オレンジの短冊には、“ベニ鮭ちゃんのぬいぐるみが欲しい“と書かれていた。これは、間違いなくモモだな。
初めて、あの ストラップを見たとき、本当に私は彼女のセンスを疑った。あれはない。


紫の短冊は、キドだろう。“来週発売のアルバムが欲しい“、かぁ。いや…どうせ買うんでしょ、それ。
キドの願いは、わざわざ短冊に書かなくても、来週には叶えられる願いだった。
…そして、端っこに“カノのバカが治りますように“と書かれているのは、見なかったことにしよう。


キドの短冊の右隣には、ピンクの短冊が飾ってある。色からして、マリーのだけれど。
“薄い本をもっと沢山読みたい“っていうのは…うん。違うよね?マリーは、そんな子じゃないよね?!…これは、後でマリーの部屋に入って、確かめるしかないと思った。


そして、お兄ちゃんの短冊には、大きく“世界平和“という文字。…うん。これはコメントしづらいから、スルー。
でも、私の願いと一番近いものを感じた。流石、兄妹ね!


シンタローやエネ、カノのは、何処にも見当たらない。まだ飾ってないのだろうか。

まあ、シンタローのは…うん。どうせ、エロ的なものを求めるものだろう。そしてエネのは、そんな主人をからかいたいとか…きっと、そんな感じ。


カノのは…何だろう。


(まあ、どうせくだらないことかな。)


私は、自分の短冊を飾りながら、そんなことを考えていた。


「あれ…、真面目に書いたのって私だけ?」


やばい。何だか、恥ずかしくなってきた。

くるっと後ろに振り返ると、そこにはニヤニヤ顔の皆がいて。「いつの間に?」とかそんなこと聞く余裕もなく。私は、顔を真っ赤にしながら自分の部屋へと逃げていった。



「やっぱり、ツンデレだよね。セーナちゃん。」

「「「ねー。」」」



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