「で、シンタロー君。なんで僕たちは追い出されたの?」

「いや、だから…皿と本を買いに…。」

「っていう口実を使って、なんで追い出されたのか聞いてるんだけどね。」


「……あ、はは。何のことやら。……………(ボソッ)エネ、救援はまだ来ないのか。」

「もーすぐです、ご主人!今、妹さんが此方に向かってくれているそうですよ!」

「げっ、モモが来るのかよ。」


「今日は、厄日だ…。」と頭を抱え、落胆する俺にエネは「ファイトですよ、ご主人!」と応援の言葉を送っていた。


   
今日は、5月10日でカノの誕生日だ。そして、サプライズパーティーをやるらしい。

何故かじゃんけんに負け、カノを連れ出す役になってしまった俺(とエネ)は、またあのデパートにやってきていた。このデパート、良い思い出がないんだけどな…。

そして、意外と勘の鋭いカノは、俺達の不審な行動に気づいていたようで。先ほどから、質問攻めをして俺を追い込む。あぁ、どんどん削られていていく、俺のHP…。

これじゃ、バレるのは時間の問題だ。


(まあ…唯一の救いはこいつが今日、自分の誕生日だっていうのを忘れていることだな。)


目を細め、疑うように俺を見るカノに俺は、只苦笑を浮かべるしかなかった。頼む、誰か助けてくれ。

っていうか…


「何か、今日は不機嫌だな。」


いつも、楽しそうに笑顔を浮かべているカノ。それが何故か今日は、あんまり笑わないし、何だか苛々しているみたいだ。

そう俺が言うと、カノは目を丸くし「あ、わかっちゃった?」と言って苦笑した。


「…ごめんね。シンタロー君にあたるのは場違いだってわかってるんだけど。」

「……何かあったのか?」

「うん。まあ…何て言うか。セーナがさ、」


「セーナ?」と不思議そうに俺は聞く。あいつが何かしたんだろうか。っていうか、本当にカノはセーナのこととなると表情豊かになるなぁ。
そう感心していると、カノは困ったように笑って言った。


「ここ最近、毎日キサラギちゃんと何処かへ出掛けちゃうんだよね。何処に行ってるのか聞いても、はぐらかされちゃうし…。
それに何だか、僕のこと避けてるみたいだし……僕、何かしちゃったのかな。」

「………………。」


(……いやいやいやいや!!それ、絶対ケーキ作りの練習に出掛けてるんじゃん!行き先、俺の家じゃん!
俺は、一体何て返せば良いんだよっ。これ!)


汗をだらだら流す俺。だが、カノも相当追い詰められているようで。明らかに動揺している俺に気づかず、目に涙を浮かべながら言った。


「……やっぱアレかな?僕がベタベタしすぎたのかな?うざかったのかな?『あれ、まじキモい』とか思ってたのかな?……どうしよう、シンタロー君。僕、嫌われちゃったかもしれない!死んでくる!」

「おおおおお落ち着け!!大丈夫だ、それはきっと反抗期なんだよ!モモにもあった。だから、速まるんじゃねえ!!!」



「………何やってんの、お兄ちゃん達。」 

「おお!妹さん、早いご到着ですね!」


駆けつけたモモは、デパートで騒いでいる俺達を冷めた目で見つめていた。

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