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《1F》
階段を下りると、まずはじめに広いロビーに出る。先程も通ったが、やはり雰囲気が出ているというか、「洋館」らしさがある。

笠「……で、これからの予定だけど〜」

喃渡「いや待て、先にこっちを終わらせてから〜」

板垣「ここの時間でこれできるんじゃない?〜」

ロビーでは、3年生の笠揺(カサ ユラギ)先輩、板垣秋留(イタガキ アキル)先輩、喃渡岳寿(ナンド タケヒサ)先輩の3人が、ミーティングだろうか、何か話し込んでいる。
部長の笠先輩は、正直あまり部長!というような感じてはない。ことなかれ主義で、長いものに巻かれるタイプだ。でも一つ一つの仕事には真面目、その点が、彼が慕われる理由だろう。また、その分副部長の板垣先輩が、締めるところを締めている、という感じだ。更に縁の下の力持ち、という言葉がよく似合う喃渡先輩。一部の部員にはサークルのパパなんて呼ばれている。

笠「おう、直永くんに最上くん」

直永「ミーティングですか、お疲れ様です」

板垣「ありがとねー、夕飯までまだ時間あるけど、暇してるの?」

最上「いえ……、探険……です」

喃渡「ふむ。俺たちも一年の時にしたものだ」

笠「こんなに広いとしたくもなるよな!なんか、ロマン感じるね」

板垣「一年生は全員参加できてラッキーだったね」

喃渡「むしろ今年の参加率が高過ぎる。逆に凄いことではあるがな」

そう、当サークルは、全員で22名いる。だが、合宿に参加しているのは20名。3年の新島健汰(ニイジマ ケンタ)先輩と、2年の文蔵盈(フミクラ ミツル)先輩は欠席だ。

笠「いやー、せっかくだから2人にも参加してほしかったんだけどね。まあ2人とも多忙だからしょうがないね」

板垣「でも、22人中20人参加って凄いことだよ」

笠「俺の人望のお陰かな」

喃渡「…はいはい」


3年生と少し雑談してから、俺たちは食堂へ向かった。先に一度見ておこうということになったのだ。
食堂は、中央に全員で座れる長いテーブルが一つと、その周りに、小振りのテーブルと椅子が複数ある、といった風貌だ。

直永「これ、序列順に座るやつじゃん!まさか実際に拝めるとは!!」

最上「そんなにはしゃぐこと……?」

直永「相変わらずドライだねもがみんは!!!」

最上「あ、門音先輩と朝日川先輩」

直永「更にスルーなの!?」

小振りのテーブルの一つに、仲良く談笑する4年の門音彩未夏(カドネ アミカ)先輩と、同じく4年の朝日川李実(アサヒカワ リミ)先輩の姿が。
傍目には、愛宕橋先輩と羽玖先輩のように、暴走すら門音先輩の手綱を朝日川先輩が握っている……ような関係に見えないこともない、が、それは違う。朝日川先輩は門音先輩を制御していないのだ。言うならば、手綱を放り出している。むしろ、見方によっては朝日川先輩の方が門音先輩を振り回しているようにも見える。

門音「はろ〜。あれ、もう夕飯の時間?」

直永「まだっすよ。今洋館の色んなところ見てるんです」

朝日川「2階に娯楽室あるけど行ってみた?一年生そこ好きそう」

最上「行ってきましたよ。確かにいいですねあそこ……」

門音「だよね〜!本当先輩様様だよっ!」

最上「先輩……?」

朝日川「ここ、私たちの3個上の先輩の所有する土地でね。その先輩の代から、合宿は毎年ここ。その先輩が卒業した今も、先輩と学校長のコネ、それから、いしのんがその先輩と仲良くて、こうして毎年ここで合宿が出来てるんだ」


直永「へぇ……石野田先輩が」

最上「そういえば、ここの鍵持ってたのも笠先輩じゃなくて石野田先輩でしたね……」

門音「いしのん、自分じゃ言わないけどこのサークルのこと大好きだからさ、来年以降も上手く取り持ってここ貸してくれると思うよ〜」

直永「ああ、それはなんか、分かりますね」

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