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トレーニングルームを出て、その向かいの扉を開けた。そこにはダーツやチェス、ビリヤードなどが置いてある。娯楽室のようだ。
直永「娯楽室やっふううぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」
最上「直永うるさい」
ついテンションが上がってしまった。お察しの通り、俺はゲームが大好きだ。このサークルに入ったのだって、文芸に興味……がないわけではないが、ここ数年(一部の人間が)ボードゲームに力を入れているという話を聞いたからだ。つまり、長期間サークル活動もといボードゲームができるこの合宿を、俺はとても楽しみにしていたのだ。
最上「でも、本当すごい……。ボードゲームもたくさんある……」
直永「これは、これからが楽しみですなぁ!!」
???「うあー!勝てない!莉子さん強いっす……」
???「え、いや、私、よく分かんなくて……?」
???「よくわかってない人に俺は負けたのか……」
???「あっ……!も、もう一回やる?」
一組の男女が何やら問答している。あれは俺たちと同じ一年の平晶兵(タイラ ショウヘイ)と須藤莉子(スドウ リコ)だ。彼らは随分親しげだが付き合っているわけではない。須藤にはサークル外に付き合っている相手がいる。つまり、平の哀しき片思いである。更に哀しいことに、この案件はほとんどのサークル部員にばれている(本人は気づいているのか分からない)。確かに須藤は守ってあげたくなるようなタイプ、というか、色々と純粋すぎてこっちもどう接していいか分からなくなるほどである。
直永「やあやあ、お二人さん。何やらお楽しみのようで」
須藤「直永くん……。最上くんも」
最上「(ぺこり)」
平「ちょ!須藤さんオセロめちゃくちゃ強い……!俺5回全敗なんだけど……」
須藤「いや、あの、私オセロあんまりやったことなくて……ルールも曖昧なんだけど……。」
直永「それは晶くんが致命的に弱いだけなのでは」
平「うぐぐ……」
最上「むしろ平くんの5連敗って方がすごいよ……」
平「いや、それ嬉しくないから……!?」
平が意気込みながら「もう一戦!」と奮闘するのを尻目に俺たちは次の部屋へと向かう。階段を挟んで個室棟の更に反対側。右と左に扉がある。とりあえず右の扉を開いてみると、そこは小規模のコンサートでも出来そうなホールだった。部屋の中心には高そうなピアノが置いてある。
直永「すっげ……!最早洋館のレベルじゃないな……!」
???「おや、2人は探険かい?」
???「初めて来ると驚きますよね、ここ」
既にホールには先客がいた。2年生の愛宕橋若葉(アタゴバシ ワカバ)先輩と、羽玖ゆかり(ワク ユカリ)先輩だ。2人は学科が一緒というのもあるが、よく一緒にいることが多い。よく暴走する愛宕橋先輩を羽玖先輩が制御する、というのがいつものパターンだが、愛宕橋先輩曰く「でも本当にやべーのはゆかりさんの方だからね!?」とのこと。
最上「お二人はここで何を……?」
愛宕橋「うむ、ここはご覧の通りホールなんだけど、確かカラオケの機具もあるらしいから、ゆかりさんと探しにきたのさ!」
羽玖「若葉さんがカラオケ大会どうしてもやりたいって言うので……。まず部長の許可が出るかも分からないのに……」
愛宕橋「いやいや、笠先輩なら絶対許可してくれるに違いないさ!」
直永「マジっすか!?ここ、カラオケもあるんですか!?」
愛宕橋「うむ、いい反応だ直永くん!!ホールの舞台袖に確かにあるのを確認したぞ!」
羽玖「他にも色んな楽器もありました〜。弾きたいって時は自由に弾けますよ〜」
直永「本当になんでもあるんすね、ここ……」
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