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桃田先輩の全く目が笑っていない笑顔に怯えながら大浴場を出る。食堂の反対側の通路、左右にそれぞれ扉と、正面に、外に続く扉がある。はじめに右側の扉を開いてみた。
???「あ、えと、どうも……」
中は医務室のようだ。医務室というよりは、学校の保健室を彷彿とさせる。部屋には2つのベット、周りにある棚には、様々な薬や医療機具が入っていることだろう。そして、ここにも先客がいた。1年生、俺たちと同学年の波風十夜(ナミカゼ トウヤ)くんだ。引っ込み思案で大人しい性格だ。同じ1年生同士、もっと仲良くなりたいが、なんだか微妙に心の距離を取られている気がする。
直永「お、波風くん!」
波風「ど、どうも……」
直永「俺たち、洋館の中探検してたところなんだけど、波風くんも?」
波風「い、いえ……、そういうわけでは……、た、ただ、医務室を見つけたので、も、もしも何かあったときに、ちょっとでも皆さんのお役にた、立てるようにと、ここに何があるのか調べてる、だけです……」
直永「さすが波風くん!しっかりしてるぅ!」
波風「い、いや、僕なんてそんな……」
直永「それで、何か気になるものとかあった?」
波風「え、えっと、基本的な薬や包帯等は一通りあるみたいです、そ、それから、輸血パックや点滴などもありました……、ある程度の設備はあるので、安心かと……」
直永「やっぱり波風くんは真面目だねぇ、っていうか、同学年なんだし、タメでいいよ?」
波風「い、いえ、こういう性分というか、癖みたいなものなので……、そ、それじゃあ僕は失礼しますね……!」
そういうと、波風くんはそそくさと医務室を出ていった。
直永「うーん、俺、波風くんに嫌われてるんかなぁ?」
最上「……彼は誰に対してもああだと思うけど」
直永「……そっかぁ。ていうかもがみん。もがみんも波風くんと会話しよ?今のパート、もがみん全く発話してなかったからね!?」
最上「……俺と波風くんが会話してる図とか、思い浮かぶ……?」
直永「うわぁ、重い沈黙しか浮かばない……」
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