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Sweet'sBeast!!


※本文の一部を抜粋





「………………来ない」


 広い部屋の中で一人。
黒Tシャツに黒のパンツ、という何時もの格好のままクッションを抱えてソファに座りながら時間を潰していた俺は、気が付くとそんな事を呟いていた。

そんな無意識の呟きも、自分以外は居ないこの部屋では何の意味も成す事も無く。…結局、空しく部屋の中に響いて消えていった。

これといってする事もなく、ただぼうっとして過ごしていた俺は、…何となく、握り締めたままの携帯に視線を向けた。


(…バイブも無いし、どうせ……でも、)


…もし。
もし、俺が気が付かなかっただけで、シズちゃんからメールがきていたとしたら。
もし、俺が気が付かなかっただけで、シズちゃんから電話があって、その着信履歴が残ってたと、したら。

……なんて、常の俺なら考えないような、そんなバカみたいな仮説を起てて。…けれども、一度そう思ってしまうと無視は出来なくて。
………結局俺は、手馴れた動作で携帯を操作して、着信履歴や受信メールをチェック、果てはセンターにも問い合わせたりなんかりした。……けど。


(………『新着メールはありません』…か)


無常にも携帯はその十一文字を映すだけで。…結果として、俺が今求めているものは与えてはくれなかった。
そのせいか、急に全てがバカらしくなった俺は手に持っていた携帯を机の上に放り投げて、クッションを抱えたまま座っていたソファに倒れ込むようにボスリ、と身を沈めた。


…なんてアホらしい。ああ、なんと滑稽な!

淡い期待を抱いて一日慣れない行動や態度をとって過ごした結果がこのザマだ。……こんな女々しい自分は初めてだ。ああ、反吐が出そうだ。

…そんな気持ちが心の中で渦巻く一方で、それほど良いとは言えなかった気分がさらに急降下してくのが分かった。

…別に、約束していた訳ではない。
昨日も特に自ら報告する訳でもなく、何時も通り他愛も無いメールのやり取りをして終わった。…一応、それとなくアピールはしたけれど。


(…けど、言わなくってもシズちゃんなら知ってくれてるって…期待してたんだけどな…)


――――今日が、俺の誕生日だって。

 



※オフ本へ続く。




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