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▼Give me a kiss?


※来神しずいざ(付き合いたて設定)
※一行だけ新セル風味
※べた甘って言うかシズデレ



突然だが聞きたい。この状況を打破できる人はいるのか、と。


(まあ、きっと不可能に近いだろうけど、ね)


…何て現実逃避な事を考えつつも、俺は目の前の男―平和島静雄―を見つめた。


「………」
「…………」


…ほんと、なんで俺はシズちゃんに壁へと追い詰められているんだろうね…!
……今更後悔しても遅いって分かってる。でも、これだけは言わせて欲しい。


(数分前の俺の、ばか…!!)



***



時は数分前にさかのぼり、俺らが何時も通り2人で下校している所から始まる。
…この時の俺はまだ、聞かせたら面白い反応が返ってくるんだろうな、なんて軽く考えていた。


「あ、ねえねえシズちゃん!今日って【キスの日】とか言うらしいよ。知ってた?」
「………は?行き成り何だよ、しかも何だキスの日って…」
「今日の朝新羅が言っててさあ、面白いなーとか思って覚えてたんだよね。まあ、新羅自身は愛しの彼女にするとか何とか言ってたけど…」
「……へえ。つまりキスの日ってのは恋人同士がキスする日って事なのか?」
「ん?んー…まあ恐らくそういう事なんじゃない?一応調べてみたけど、日本で始めてキスシーンのある映画が封切られた日が5月23日らしくて、」
「臨也、ちょっと来い」
「へ、何…」
「いいから」


話していたら突然シズちゃんに腕を掴まれて、そのままずるずる引っ張られながら無理矢理歩みを進めさせられた。
最初はそれが気に食わなくて抵抗したんだけど……ほら、相手はシズちゃんだし?…馬鹿力だから敵う訳ないでしょ普通…。

……勿論途中から諦めてそのまま引っ張られてたのは言うまでもない。

うん、でもさ。ちょーと気がかりなことがあるんだよね。


「…シズちゃん。俺の気のせいじゃなければココ、路地裏だよね?何でこんなとこ来なきゃいけないの?てか何する気?」
「うっせ、ちょっと黙ってろ…ああ、ここら辺で良いか」
「いや俺が言うのも何だけどちょっとぐらいは人の話聞こうよ…!つーかここ狭いよ!動きづらいなもう…何コレわざと?わざとなの?」
「わざとに決まってるだろうが」
「いや何でだよ。意味分かんないんだけど。何が理由でココに連れて来た訳?俺、なんか怒らせるような事言ったっけ?」
「…さっき手前が言ってただろうが。…【キスの日】だって、なぁ?」
「………へ?」


意味が分からず一瞬動きが鈍った俺をシズちゃんはトンっと壁に押し付けて、顔の横に手がきて、片手が俺のあご、に………え?
思わずシズちゃんを真っ向から見つめて唖然としていると、俺の耳元でポツリと呟かれた。


「…恋人同士がキスする日、なんだろ?」
「っ!?…な、」
「だったら俺らもしなきゃ、だよな?」


そう言って最近見せてくれるようになった、目じりが下がって軽く微笑んでて……ええと、甘ったるい笑顔を向けられた。


(…え、ちょ、ちょっと待って。シズちゃんってこんなキャラだったっけ…!?)


何て俺は混乱しながらも、とっさにこう言ってしまった。


「ちょ、ちょっと心の準備、させて…!!」



***



……今思い出しても嫌になる。とっさとは言え、まるでどこぞの乙女のようなセリフを言ってしまったなんて…ああくそ、最悪だ…!


「…おい」
「!…な、何?」
「早くしねえと誰か来るぞ?…まぁ、簡単に見付かんねぇように奥の方に来たけどよ」
「…ああ、成る程…ってそれじゃ俺に拒否権とか無くない?ひどくない?」
「何だかんだ言ってるけど実際そんな嫌がってないだろ手前は。…それ位分かる」
「は!?な、何言ってるの馬鹿じゃない!?馬鹿でしょ!!」
「あーもう叫ぶな。ごちゃごちゃうるせえと、襲うぞ?」
「おそ…!?な、何でさ…」
「…この近距離で我慢してるんだ。キツイに決まってるだろうが」
「…シ、シズちゃんって結構俺の事好きなんだね…」
「はあ?何今更な事言ってやがる。…ほら、早くしろ」


なんて言いながらぎゅっと抱き締められて、シズちゃんの胸に顔を埋める形になった。
…恐る恐る背中に手を回したら、頭を撫でられた。…シズちゃん、君って結構なたらしだね…。今本気で思ったよ。


(…何て馬鹿な事思ってる場合じゃない)


…まさかあんな話題でこんな事になるとは思わなかったし、驚いた。それにここまでシズちゃんが優しいなんて予想外だった。……うん。でも不服な事に…嫌じゃないんだよなぁ、これが。


そう思ったら、何だか胸の内側がほわり、と暖かくなったように感じた。


(……ああ、そっか)


これが愛しいって気持ち、なのかな。


「……シズちゃん」
「ん」
「顔、こっちに向けて?」


そう言うと、言われた通りこっちに顔を向けてくれるシズちゃん。…なんだろ、ちょっと犬みたいで可愛いかも。

なんて事を思いつつも、俺は背伸びしてシズちゃんの唇に俺の唇をあわせた。



30秒…いや、10秒だったかもしれない。ただ唇をあわせるだけのキスだったけど、凄く長く感じた。



ゆっくりと顔を離してちらり、とシズちゃんの顔を伺うと……凄く嬉しそうな顔をしてた。…うん、そういう顔やめようか。羞恥心に襲われるから。


「…ちょっと、何か言ってよ恥かしい」
「……可愛い」
「…うん。やっぱり喋らなくて良いよって言うかもう喋るな二度と喋るな…!!」
「臨也、」
「だから喋るなって、」
「もう一回、していいか?」


え、と返事を返すよりも早く、シズちゃんは俺に顔を寄せてきて、さっきの俺みたいにそっと唇をあわせてきた。
それがあまりにもゆっくりで優しかったから、思わず強張ってしまった体から徐々に力が抜けていった。

それを見計らったかのように、ぬるり、とシズちゃんの舌が入り込んできて、俺の舌に絡めてきて……う、わ。


クチュリ、と音が路地裏に響くのが分かった。


「ん、む…ふぁ…あ、はぅ」
「…ん…」


舐めて、絡めて、互いの唾液を飲み込んで。…どうしよう、何だか頭がぼーっとしてきた…。


そう思ったら今度は息がだんだん苦しくなってきたのを感じて、慌ててシズちゃんの胸を叩いた。
するとそれに気付いたのか、ゆっくりと絡まった舌と唇を離してくれた。…と思ったら今度は額に額をコツン、とくっつけられた。……何でそう一々恥かしい事するのかなシズちゃんは…!嬉しいけど!


「…大丈夫か?」
「……う、うん。大丈夫…」
「そっか。……なあ、臨也」
「ん、なぁに?」
「…好きだ」


そういってまたあの笑顔になったシズちゃん。…ああもう、何でそう俺を甘やかすのかな…!


(そんなに甘やかされたら俺が俺で無くなっちゃうだろ…!!)


なんて思いつつも俺は、赤くなった顔を誤魔化すかのように、目の前のシズちゃんへもう一度キスをした。…恥かしくて言えない気持ちも込めて、ね。



fin



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5/23日はキスの日!って事でキスだらけにしよう!と思ったのですが中々に難しかったです^^;
2万打企画がこんなのですみません…!いやでも書いてて楽しかったです!皆様本当に有難うございました…!
※この作品はフリーです。ご自由にお持ち帰り下さいませー^^*



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