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理性よ、死んでくれ


※ドタチン視点
※ドタイザ



タタタ、と遠くから誰かがこちらに向かって駆けてくる足音が廊下に響く。
ああ、これはきっと『アイツ』だろう、なんて思った俺は自然と歩みが遅くなった。…アイツがすぐ追いつける様に。

そのお陰か、そのまま10秒もかからない内に足音は近付いてきて。振り返ろうとしたその時、

「ドッタチーンみっけ!」

背中に乗ってくる衝撃と共にに顔の横からにゅっと手が出て首に腕をまわされた。軽いから流石によろける事は無かったが、咄嗟に足に力を入れる。


「うおっ…とと。何だ、どうした臨也」
「えー?何となく歩いてたらドタチンを見つけたから、つい?」
「ついって、お前なぁ…てか何で人の背中に乗っかってるんだよ」
「良いじゃん別にー。それに俺、ドタチンの背中が1番好きだって何時も言ってるじゃん」
「……あー、まあそうだが…」


…相変わらず無防備な行動と発言に反応が遅れた。
何時もは散々周りを翻弄させて人を弄んでいるコイツが、何故だかここ最近よくそんな事を俺に言うようになった。
恐らくその発言も気まぐれ何だろう。………けれど、それに少なからず期待しつしまう自分が居る事も確かで。

(…何でよりにもよってコイツが好きなんだろうな、俺…)

そんな事を考えつつも、今だ離れようとしない臨也をそのままに俺はそのまま次の授業の為、目的地の音楽室へと向かう。……途中、変な視線を感じるがそれはもう諦めた。


「で、ドタチン何処向かってるの?」
「は?何処って…音楽室だろ?次の授業」
「さっすがドタチン!真面目だねー…やっぱ出席したい?」
「ああ、まあ一応な。学生の身分だし」
「そっか。えーっと……うん、まだ時間あるね!よしドタチン、ちょっとこっち来て!」
「は?うわっ」


突然何かを言って俺の背中から飛び降りたと思ったら、今度は手を引かれて……は?


「お、おい!何処行くつもり…」
「だいじょーぶ、用事あるの音楽室の隣だし。授業には間に合うよ!」
「…は?……隣って…準備室か?」
「そうそう!」
「そうそうって…あそこは鍵が必要じゃ…ってお前まさか」
「あっははーそのまさか!」


チャリ、と音がしたかと思えば満面の笑みの臨也の顔の隣に銀色の鍵が1つ。……恐らく勝手に作ったスペアキーか何かだろう。


「…お前、ソレあんま使うなよ。先生方の迷惑になるから」
「ドタチンがそう言うならそうするー!」


(ああ…嘘だな)

なんて事を思いつつ、俺はそのまま臨也に手を引かれ準備室へと向かった。



***



「…で、だ」
「うん?何ドタチン」
「この状況は何だ?」
「何って…押し倒してる?」


キョトンとした顔で言う臨也の顔を下から見つめながら、その返答に頭を抱えたくなった。…それじゃ意味が分からん。


うん、あれだ。順を追って考えよう。
確かアレだ。臨也に連れて来られるがままに準備室に来て、中に入って。
そしたら臨也がうろちょろ中を探索してて、途中何か見つけたのかイスに乗って棚の中あさってて。
それを見た俺が危ないぞって声をかけようとした瞬間、バランスが悪かったのか臨也が倒れそうになって、それで、

ああそっか、落ちそうになった臨也を咄嗟に抱きとめたんだっけか。
そう答えが出たところで、今の体制を思い出す。…あー…これは、色んな意味で危ないよな…。


「…とりあえず、臨也。無事なら退いてくれないか」
「……ドタチンって偶に面白い混乱の仕方するよね。今色々考えてたでしょ」
「お前のせいだろうが…ってそれは別にいい。それよりも…――」
「―――やだって言ったら、どうする?」
「は?」
「退くのがイヤだって、…このままで居たいって言ったら、どうする?」


……きっとコイツの事だ。何かしら言ってくるとは予測していたが…流石にこれは予想外だった。…というかコイツ、分かっててやってんのか?


「い、臨也――」
「…ドタチンさ、何時になったら俺に告白してくれるわけ?好い加減俺待てないんだけど」
「……は?」


その言葉に体が強張る。
……いや、気付かれていそうだとは思っていたが…告白?


「大体さ、俺いっつもドタチンの事好きって言ってたのに…」
「……………は?」
「だから、好きだって…」
「待て待て。お前俺の背中が好きだっただけじゃないのか…?」
「………は?」


俺たちはお互い暫くの間無言になった。するとじわじわと臨也の顔が赤くなって……あー、その、何だ。


「……臨也」
「…………なに」
「もしかして、今まで【そういう意味で】好きって言ってたのか?」
「…〜っそうだよ!分かりにくくて悪かったね!これでも精一杯だったんだよ!!」
「いや、それは悪くないが…」
「ほんっと有り得ない…何だよ気付いてなかったとか…俺バカみたいじゃん!」


ああもうヤダ帰る!何て言って俺の上から退こうとした臨也を、今度は俺が下から抱き締めた。抵抗されるがそんなのは無視して、俺は話しかけた。

「つまり、あれだ。臨也は俺に好きだって言ってて、尚且つ俺がお前の事好きだってのにも気付いてた訳か」
「………」
「で、俺から言うのを待ってたけど、我慢出来なくなって呼び出した、と」
「ちょっとドタチンその言い方止めてくれない?俺変態みたいに聞こえるよそれ」
「ちょっと黙ってろ。……つまり、お前は俺からの告白をずっと待ってたって訳か?」
「………………」


文句を言ってきたかと思えば今度は俺の胸にボスン、と顔を埋めて無言になった。…そのまま暫くしてから、頷くのが分かった。


「…そうか。あー…何か、悪ぃな」
「っ悪いで済まされないでしょ!ああもうやだてっきりドタチンも気付いてると思ったのに何一人歩きとかマジ恥かしいんだけど…!ああもうドタチンのばか!」
「…そうだな、気付けなくて悪かった」
「ほんとだよ!だからドタチンは…っ」
「臨也」


真面目に声をかけるとぴたり、と言葉がとまった。


「…俺は臨也が好きだ。…付き合ってくれるか?」
「……当たり前だよばかぁ!ああもうほんと遅い!信じられない!」


そう言ってポロポロと泣き出した臨也を抱き締めて頭を撫でてやる。すると俺の首に腕をまわして、ぎゅっと抱きついてきて。
そんな臨也をほって置く事が出来るハズもなく、俺は微かに聞こえた鐘の音を無視する事にして、ひたすら臨也を宥めていた。
…理性と格闘しながら、な。






(そうしたら俺はコイツにキスの1つでもしてやれるのに)




fin.


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「取り越し苦労」提出作品です。遅くなって大変申し訳ありませんでした…!orz
ドタチンでも悩む時は悩むんじゃないかなーと。





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