「ばーか」
※臨也視点
※静×臨+波江
※甘々っていうかほんわか?
あまかった。そう思った。
仕事帰りに突然雨に降られて、まあ仕方ないか、なんて諦めて濡れながら帰宅したのが昨日。
で、今日。
見事に39度の高熱を出してしまい、波江に呆れられてしまった。
おかげで今日の仕事の予定が全部キャンセル。挙句にベットという名の拘束具から出られない。嫌になるよ全く…。
「…あ、もう帰って良いよ」
「言われなくてもそうするわ。貴方の菌が私を通して誠二に移されるなんて考えたくも無いもの」
「相変わらず誠二君第一だねえ、君は」
「貴方に誠二の名前を呼ばれたくないのだけれど?」
「うん、知ってる」
「……40度近い高熱を出してる割には、元気ね」
「何、実は心配してくれてたとか?」
笑いながらそう言ったら、何故か深い溜息をつかれた。
やだなあ、傷つくじゃないか。
なんて思ったのに気付かれたのか、ギロリと睨まれた。おー怖い怖い。
黙った俺に気が済んだのか、波江が俺に背を向ける。
「…失礼するわ」
「はいはい、じゃーねー」
パタン、と扉が閉まる音がすると同時に、上半身を起こしていた身体がボスン、とシーツの波に埋もれた。
あー…キツい。ちょっと、無理しちゃったなあ。熱上がったかも…。
…でもこんな姿誰にも見せたくないし……。
そんな事を考えていると脳裏によぎる、バーテン服姿の彼。
…病気になると気弱になるって本当かも。……『会いたい』だなんて。
……まあ、最近会えてないって事もあるけど。
………少し、休もうかな。
そう思って、俺は目を閉じた。
***
…………今、何時だろう。
目が覚めてから俺はまずそんな事を考えた。窓から差し込む光が寝る前より強くなっていたから。
多分昼過ぎくらいかな?なんて思いながら次は自分の様子を確認する。
…だいぶ気分がマシになったな。寝て良かったかも。……あ、そうだ。寝汗かいてるだろうから着替えな、きゃ……?
…服が、ベタついて、ない?
あれ?何で?俺着替えたっけ…?
「お。起きたか。大丈夫か?」
声が、した。
「汗凄かったから、勝手にタオルで身体拭いた。ついでに服も変えといた」
この声を聞き間違える事は無い。けど。
「後一応、粥作った。…食えるか?…あー。水の方が良いのか?」
…何で、ここに居るの?
「……シズ、ちゃん?」
「何だ。寝ぼけてんのか?」
「如何して俺の家に居るの?ここ新宿だよ?」
「……手前の助手が教えてくれたんだよ。折原臨也が風邪で寝込んでる、って」
…驚いた。まさか波江がシズちゃんに連絡してたなんて。俺が寝た後にでも連絡したんだろうか。いやでも何でそれでシズちゃんが来てくれる訳?
固まる俺を他所に、シズちゃんは言葉を続ける。
「…とりあえず水と粥持ってくる。何か腹ん中に入れねえと薬、飲めねえからな」
そう言って離れようとしたシズちゃんの服を掴む。訝しげに見てくるのは無視して俺は今一番気になってる事を聞いた。
「…ねえ、シズちゃん」
「…何だ」
「……どうして、来てくれたの?」
今まで新宿に来たこと無かったのに。
口にはしなかった言葉も伝わったのだろう。…暫く間があった後、シズちゃんが口を開く。
「心配だったのと、……手前に会いたかったから、だ」
…粥とってくる、と一言だけ残してシズちゃんは部屋から出てった。…耳を赤くして。
……いい歳した大人がそれぐらいで恥かしがるなよ。もう。
思わず俺は小声でつぶやいた。
(そんな君が大好き。…ああ、顔が熱い)fin.
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「さあ、」提出作品です。波江さんが優しい…。