銀世界の中で君だけが
※臨也視点(独白)
※静←臨
「あ、雪」
仕事が終わった午後。
気分転換にと外に一歩踏み出してみると、すでにあたり一面が真っ白になっていた。
傘持ってこれば良かったかな、と考えつつも空を見上げてみた。
空はまるで都会の排気ガスに汚染されてしまったかのように灰色一色だった。
そこから吐き出されるように、白くてでかいのが大量に落ちてくる。
(まるで、ゴミがこの世界を覆いつくそうとしているようだ)
なんてくだらない感想を抱きつつも、ふと思う。
(シズちゃんも今、空見てるのかな)
一駅分離れた距離は、会うことも彼を見ることも出来ない。
けれどこの時間、この瞬間。同じこの灰色の空を見ていたとしたら。
(そんな事、ある訳ないけど。分かってるけど)
――胸が温かくなった、気がした。
そんな事を考えていたら無性に彼に会いたくなり、傘を取りに戻る事もせずに俺は目的地に向かって歩き出す。
(今日は外に居るかな。居るとしたら池袋の何処らへんかな。こないだは5分弱で見付けてくれたけど、今日は何分で見付けてくれるんだろう)
気持ちがだけが急く中、危うく雪が目に入りそうになり、目を閉じる。
その一瞬に見えた、彼。
「…早く、会いたいな」
彼は今この世界で、きっと一番目立つ事だろう。
(鮮やかに色付いて見えた)