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Chemistry【1】


※臨也視点
※静→(←)臨






「だからさ、この式だとこーなるの。解る?」
「………」


ショート寸前なシズちゃんを見て、溜息。
マジこいつ、馬鹿だ。




***




話は数十分前の週末最後の授業である、科学の時間にさかのぼる。




「じゃあさっき説明したの、来週月曜日の化学の時間にテストするからしっかり勉強してこいよー」


授業終了と同時に告げられた内容に、えー!と不満げな声が教室内に響き渡る。


それが聞こえているであろう教師は

「難しいから覚悟しとけー」

と笑顔で一言。さっさと教室から出てった。あの先生やっぱSかなー。


なんて下らない事を考えながら、ぼーっとしてるシズちゃんとそれに話しかけてる新羅の席に近づく。


「どうしたのシズちゃん、阿呆面がさらに酷くなってるよ?」
「……あ゙ぁ?」
「やあ臨也、良い所に来たね!ところで今凄く自然に僕の事をスルーしてたけどワザとかい?」
「やだなぁ、俺がそんな事するわけ無いだろう?」
「お前らうるせえ黙れ」


ギロリと睨まれた。おお怖い。


「やだなぁーシズちゃん。声かけただけなのに」
「うぜえ」


何時もならここで殴りかかってくるはずだろうシズちゃんは、心ここに在らず、って感じ。しかも困惑気味で。
きっとテストどうしよう、とかそんなだろう。分かりやすいなぁ。

でも何かムカつく。何時ものシズちゃんじゃないとつまらないんだけど俺が。
……よし、からかっちゃえ!


「あんま眉間に皺寄せると戻らなくなるよー?」
「黙れ」
「てかどうせテストの事考えてるんでしょ?」
「……黙れ」
「シズちゃん馬鹿だから土日フルに使っても出来るか難しいよね」
「マジで黙れこのノミ虫野郎…!耳いかれてんじゃねえのか?!手前ぇはどうなんだよ!」
「楽勝だよ当たり前じゃん!何処かの体力馬鹿と一緒にしないでくれる?」
「………っの野郎!」


おっと危ない。ひょいっとね。


バキッ


避けた俺の代わりに後ろにあった机が真っ二つ。誰のか知らないけど、ご愁傷様。


「避けんじゃねえよいざやくんよぉ」
「無茶言わないでよ、俺シズちゃんと違って普通の人間だから」
「嘘付けこのクソが…!」


お、そろそろ楽しいお遊戯の始まりかな?


なんて考えながら思わず自分の唇を舌で舐めて濡らす。楽しいなあ!



「ちょっとちょっと2人とも!教室内で喧嘩はやめてよ、隣の席の僕が一番被害来るんだから!」
「黙ってろ新羅」
「そうそう、せっかくシズちゃん弄れるんだから」
「手前ぇ…!」
「はいはいはいストップストップ!静雄は他に気にする事あるでしょ?」
「あ゙?」
「さっきのテストの話とか」
「………」


あ、ちょっとシズちゃん止まっちゃったじゃん。何してくれんのせっかく忘れてたのに!


「そこで1つ、僕から提案だ」
「……んだよ」
「臨也に教えてもらえば良いじゃないか!」
「「は?」」


うわ、声被った最悪。シズちゃんもしかめっ面だし。
いやそれよりもさ。


「ねえ新羅、それ本気?」
「もちろん本気だとも!それに君は僕より頭が良いし、さっき楽勝だって言っていたじゃないか。しかも明日から土曜だから2日間家で勉強出来るよ!うんうん我ながら凄く良い案だ、これでセルティとの愛の巣に心置きなく帰れるしまさに一挙両得だね!」


じゃあ僕はもう帰るよ、頑張って!と一言だけ残し颯爽と去っていた新羅。何を頑張れと?
ていうかこの状況、何な訳?他の人たちは途中の不穏な空気で逃げてったから俺らしか居ないし。あ、これは何時もの事か。


「…」
「……」
「……え、マジですんの?」


何か無言で机合わせてるんですけど。しかも誰かの。誰のだし。
てかいやいやいや、ちょ、マジ?


「………んだよ、悪ぃかよ」
「…いや、うん」




………まあ、暇だしいっか。




***




で、今に至る。
正直あまりの頭の悪さにげんなりした。出来るなら数十分前の自分を止めたいよ本当。



「…生きてる?」
「……………おう」


…こりゃ駄目だ。
ああ、先は長いなあ…。


俺は恐らく今までで一番深い溜息をついた。



(クソッ、覚えてろよ新羅)





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