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愛しいアナタ【4】


※甘々の静雄視点
※激しくキャラ崩壊
※少しシリアスっぽくなります






結構飲んだな、とふと思った。
現に今、10杯はとうに越えているのは確実で、正直どのぐらい飲んだか分からなかった。
白酒ってけっこう度数あるしな、と考えていると、スッと影が俺を覆った。
何だ?と顔上げようとしたその時、ドンッと後ろへと押された。
鈍った脳は突然の事に対処しきれず、俺は強かに後頭部を打った。まぁ、あまり痛くはないんだが。
とりあうず何が起きたのか確認しようと視線を先程見ようとした方向へ向けようとした時。


ドスンッ


何かが俺の上に乗っかってきた。思わず潰れた声が出そうになったが、何とか堪えた。
ちらっとその元凶に視線をやると、やはりというか、あいつ。臨也だった。
倒れた俺の上に向かい合うように乗っているせいで、顔がめちゃくちゃちけぇ。

一体何なんだ、と思っていると、臨也が口を開いた。


「えっへへーシーズちゃんっ」
「あぁ?」
「何かねーすっごい楽しーのー」


あはは、と笑う顔を凝視してみる。
……目がとろりとし、さらには目元が赤みがかっているのに、気付いた。

あ、こいつ酔ってやがる。

ちらりと机を見ると、なるほど確かに飲んだ形跡がある。
しかし、白酒をほとんど飲んだのは確か俺の筈。となるとこいつが飲んだ量は微々たるもんだ。
なのにこの酔いっぷり。こいつ実は酒にすげー弱いのか…?
そんな事を思いながら、さてどうすっかな、と考えていた。


「……ねえ、シズちゃん」


静かな部屋に、臨也の声が響いた。
まあ、しばらくこいつの相手をするのも悪かねえかな、と考え俺は臨也へと視線を向ける。


「どうした?」
「…好き」
「…………………は?」
「好き。好き。大好き」
「お、おいどうした?」


どうしよう。臨也が壊れた。マジそう思った。
今まであんだけ俺に暴言吐いて、陥れて。そんなこいつが俺を好き?有り得ないだろ。
そう思いつつも、こいつの必死な目に何も言えずにいた。


「人は好き。"愛してる"。でも、シズちゃんだけ。シズちゃんだけは、その"愛してる"とは違う」
「…」
「最初は、殺し合いが楽しかった。それだけ。でもだんだん、シズちゃんとの会話とかで安心出来るように、なって。終いには、同じ空間に居るって事、だけ、で…安心、出来るように、なって。でも、欲は深くなるばかり、で。……っ一緒に、居たく、て」
「…」
「だか、ら。今日。ひな祭りって分かった、時。チャンスかな、て。素直に、なれる、かなって。追い出されるかも、とは、思ったけど」
「…」
「でも、しなかった。シズちゃんは、しなかった。凄い、安心、した。…でも」
「…でも?」


そこで臨也の言葉が途切れる。涙をボロボロと流しながら、ひっく、と声が引き攣る音が、部屋に響いた。
俺は、そっとひどく壊れやすいものに触れるかのように、臨也の頬に手を伸ばした。ビクリ、と臨也の体が揺れる。
紅い瞳から溢れてくる雫を拭いながら、出来るだけ優しく語りかけた。


「なあ、臨也」
「……っ」
「我慢、しなくても良いんじゃないか」
「…え?」
「言いたい事を、言えば良い。聞いてやるから」
「で、も」
「別に困りゃしねーよ。…それにな」
「…?」
「わざわざ俺の為に池袋に来て、材料買って、ちらし寿司やら白酒やら作ったんだろ?」
「!」
「だから、な。お礼に聞いてやるよ。お前が今まで溜め込んでたの、全部」
「シズ、ちゃ」
「な?」

笑顔で俺がそう言うと、臨也はまるで最後の糸が切れたかのように、俺の胸に顔を押し付け、沢山の言葉を口にした。


「シズちゃん、好き。好き。大好き。愛してる」
「ああ」
「会えない日は、凄く、辛くて。ほんとに、辛く、て」
「ああ」
「池袋に、来ると。必ずシズちゃん、見つけ、てくれて。それが、凄、く嬉しく、て」
「ああ」
「殺し、合いでも。構ってくれるのが、嬉、しくて」
「…ああ」
「でも、どんどん、欲が出て。それ以外、でも、シズちゃんと、関わりたい、て、思い始めて。一緒に、ご飯、食べたりとか、同じ部屋に、居たいとか、色々。だから、ピッキング、とかして。勝手に入って。…ごめん、なさい」
「謝らなくて、良い」


聞いてたら、だんだん恥ずかしくなってきた。こいつ素直になるととことん素直になるんだな。新しい発見だ。
それに、聞いてて思ったんだが、ここまで俺を愛してくれる奴なんて、他に居ないんじゃないだろうか。
いつの間にか頬へと伸ばした手を、臨也の頭へと移動させ、サラリとした艶やかな黒髪を撫でながらそんな事を思った。


「シズちゃん、シズちゃん、シズ、ちゃん…!」
「何だ?」
「ごめんなさい。好きに、なって。ごめんね。でも、一緒に、居たい。居ても、良い?…好きでいて、良、い?」


ここまで愛されて、思われて。俺って実は結構幸せ者だったんじゃね?と思いながら、腹筋を使って臨也も一緒に上半身を起こさせる。
必然的に俺の腹の上に臨也が座った状態で向かい合う形になったが、まあ、良いか。


「臨也」
「う、ん」
「俺はまだ、お前が好きかは分からない。自分の気持ちを深く考えた事なんか無いからなぁ」
「……ぅん」
「でもな。3つ、分かった事がある。…まず1つは、お前が可愛いって事」
「…え?」
「次に1つ。お前、笑うとすげえ綺麗な事」
「え、え?」
「最後に1つ。…ここまで俺を愛してくれるのは、お前しか居ないって事」
「…ぁ」
「ついでにおまけだ。…俺はそれが、全く、嫌じゃねえ」
「−−!」
「って事でな、もう少し待ってくれ。そうしたら、自分の気持ちに確信が持てそうなんだ」
「…ふ、ぇ」
「…だから、な?」

−これからも一緒に居て、俺を好きでいてほしい。

こくこく、と頭がもげるんじゃないかと思うくらい高速で頷く臨也。どうやら泣きすぎて喋れないらしい。
そんな臨也を見ていたら、何故か笑いが込み上げてきて。俺はそれをごまかすかのようにそっと、なるべく力を込めずに抱きしめた。
すると、臨也はそんな俺に戸惑いながらも、恐る恐る背中に腕をまわしてきて。
ぎゅ、と泣きながらも俺の服の背中あたりを握りしめるのを見ていたら、なんだか胸の奥が熱くなってきた。


−−−ああ、そうか。これが。



  (愛しいって、気持ちなんだな)



fin


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