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さよならとは言わないで【1】


!この話は映画『黄泉がえり』のパロです。死ネタなのでご注意!

※静雄独白
※臨也死亡
※静→臨






――やあ、久しぶりだね静雄。と言っても電話越しだけどさ。……え?『またアイツが何かやらかしたのか』って?はは、残念だけど今回は違うよ。…いや、違わない、かな?…やだな、ふざけてないよ。今日は君にどうしても連絡しないといけない事があってね。…静雄。よく、聞いて。………臨也が、"死んだ"よ――


…そんな嘘みてえな話を聞かされたのが、一昨日の事だった。


最初、新羅の奴が何を言ってるか全く理解出来なかった。
…いや、大事な事を言っていた。それは分かった。…なのにその内容が一切頭に入らなかった。……理解したくなかった、ってのがこの場合正しいのかも、な。


無言になった俺の様子でそれを察したのか、新羅は何か重要そうな話を少しした後、『また詳しい話は後でするから』…その言葉を最後に、その電話は切られた。


ツー、ツー、ツー、


無機質な機械音が部屋に、耳にこだまするのが分かった。


(…ああ、切らなきゃな)


…そう思ったのに、何故だか受話器を置く事が出来ず、ただそれを握りしめたままで。……気が付いたら俺は壁づたいにズルズルと体が崩れ落ちるのが分かった。

ぺたり、と床に座りこんで、呆然として。…少ししてから、好い加減動かないとそろそろ仕事の時間だからヤバイよな、なんて思いつつも、やっぱり動けなくて。
…暫くしてから脳みそが動き出したのか、徐々にだが理解する事が出来た。



「……アイツが死んだ、だって?」



一体何の冗談だ。そう言って笑えれば良かった。…なのに、新羅の言葉が、それを許してはくれなかった。


新羅曰く、アイツは病気だったらしい。
曰く、その病気は生死に関わるものだったらしい。
曰く、それを治すには数ヶ月の入院が必要だったらしいのだが、臨也はそれを拒否したらしい。
曰く、理由を聞いても答えなかったらしく、せめて身近な人には教えるべきだ、と進言したところ、『シズちゃんだけには言わないで』の一点張りだったらしい。

…曰く、『言ったらシズちゃん、本気で殺しに来ないでしょ?』、なんて笑いながら言っていた、らしい。



「………ざけ…な…」



何だよ。

何なんだよ、それ。

つまりだ、お前は病気なんかのせいで死んじまったって事か?俺といくら殺り合っても死ななかった、お前が、か?

こんな、あっさりと?呆気なく?



「……っふざけんな!!」



ズガンッと俺は衝動のままに壁を殴りつけた。
破片が飛び散った事や穴が開いたのは気にならなかった。ただひたすら腹の奥底から湧き上がる悔しさか悲しみか良く分からないこの感情を必死に耐えた。



如何して。如何してお前は、何時も、何時も!



「手前自身を大事にしねえんだよ…っ!!」



何かある度に俺に突っ掛かては殺り合って。普通の人間の体のくせに、何度も、何度も。
終いには【俺に言ったら本気出さないから言わないで】、だ?…ああ、そうだよ。出す訳無い。出せる訳が、無い。

けど、きっと手前はその理由が【弱っているのには手を出さない主義】とか何とか言うんだろう。
…悪ぃが、それは大きな間違いだ。俺には俺の理由があんだよ。

今だから言えるが、俺は――



…折原臨也が、好きだ。



……笑える、よな。
会う度に殺すと言っては殺り合って、殺り合っては殺すと言って。…学生時代から今更変えるなんて、出来るハズが無かった。
むしろ逆に、この関係を続けるのに必死だった。…この関係でなければきっとアイツは俺の前から居なくなる。そう分かっていたから。


そんな相手に惚れてる、なんて言えるハズが無い。
だからこの関係には不満は無かった、本当に。…けど。



「……最後まで、足掻けよ」



足掻いて足掻いて足掻きまくって、最後まで生にしがみ付けよ。そんな簡単に、諦めるなよ。…俺の好きな奴を、虐げる様な事は、止めてくれよ。



…どうしてそんな簡単に諦めたんだよ、なあ、



「……いざや…っ」



――これが5月2日、……臨也の誕生日の2日前の、出来事だった。




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もう少し独白続きます。静ちゃんごめんね…!


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