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愛しいアナタ【1】


※静雄視点
※なんだか苦労人っぽいシズちゃん






その日、珍しく俺はクソ虫に会う事も、また取り立て中にブチ切れる事も無く無事に仕事を終える事が出来た、と家までの帰路を何時もよりいくらか機嫌良く歩いていた。
今日の晩飯は何にすっかな、と考えていると、あっという間に家の前に着いていた。
何時も通り鍵を取り出し、差し込んで回す。

スカッ

は?と思いもう一度回してみるがやはりというか手応えが無かった。
おかしい。確かに家を出る時に鍵をかけた筈だ。確認もした。
そこで俺はピンときた。奴しかいない、あのクソ虫野郎しか…!あいつまたピッキングしやがったな…!!
怒りで目の前が真っ赤になりかけた時、ふと手に目をやると、鍵を握り潰しそうになっているのに気付いた。慌てて俺は目を閉じる。

落ち着け、このままじゃあ鍵どころか家まで破壊しちまう。したら俺が困る。
深く深呼吸したりなんやらして、なんとか怒りをある程度鎮められた。よくやった俺…!

とりあえず俺はゆっくりと目を開け、鍵を懐にしまってからドアノブに手をかけて、開けた。


「あ、シズちゃんお帰りー」


そんな声と共にひょこっと現れたそいつ−折原臨也−が立っていた。……エプロンとしゃもじ付きで。


「……てめぇ、人ん家で何してやがる」
「何って、ご飯作ってるの」


見て分かんない?と首を傾げながらしゃもじをいじりつつ聞いてきた。
その光景に、一気に毒気を抜かれた。
…普通のエプロンならまだしも、女がするようなフリフリしたピンクのエプロンを身に付け、おまけにしゃもじまで持っている天敵を見たら、誰だってなる。そう、俺でなくとも。
だから可愛いとか思うのは気のせいだ…!


「…なんだそのエプロンは」
「あ、これ?かわいーでしょー!わざわざ持ってきたんだから!」


くるりとその場で回るこいつ。
元々細いからぱっと見女に見えてまじありえねぇ。
それ以上に可愛いと思っちまう自分が1番ありえねぇ…!!


「で、シズちゃんご飯食べる?」


その声にハッとする。危うく意識が有り得ないとこにいくところだった。
…あぁ、なんだか疲れた。すげえ疲れた。殴る気にもならねぇ。


「……毒とか入ってないだろうな」
「やだなーシズちゃん、俺そんな奴に見える?」
「見える」
「あはははっ即答だねぇ?」
「………さっさと寄越せ」
「あっれー疑ってるんじゃなかったのー?そんなあっさり…」
「良いからさっさと出せ!」
「はいはーい☆」


にやけた面のまま台所に消えたそいつにため息をつきながら、俺は飯を食う事にした。もうヤダこいつ。




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