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Chemistry【5】


※臨也視点
※静×臨+平和島家の人々






結論から言うよ?
…シズちゃん家に泊まる事になった。不本意だけど、ね!



あの後俺は、あーどうしようどうやったら逃げられるかな!なんて事を考えてた。
そうしたら、まるで見てたかのようにタイミング良く幽君と2人の母親が帰って来てさ。
しかも今までのいきさつを知ってるのか、シズちゃんと同じ事言ってきて、やけに歓迎された。…なんで知ってるのこいつら。

そのまま、泊まるなんて一言も言ってないのにも関わらず、勝手に色々準備されてさ…。ちなみに、その間に逃げようとしたらシズちゃんに捕まった。不覚だ。
…おかげで逃げる事も出来ず、不本意ながらも一緒に食卓を囲んだよ。

正直、シズちゃんの親の事…片親だとか、顔だとかは情報で知ってたから、幽君以外と馴れ合う予定なんか全く無かったんだけどなあ。
…そういや幽君、今日用事あるって言ってたけど、もしかしてそれってこの人だったのかな…?……平和島家って怖いね。


…でもこの時母親に、これからも静雄の事をよろしくね、なんて柔らかい笑顔で言われて。
…別に俺、シズちゃんの友達じゃないんだけどな、と思いつつも、自然と気分は良くなった。…まるでシズちゃんの友達は後にも先も俺しか居ない、と言われたような気がしたから。


で、諦めて妹たちに連絡入れてから、勧められるがままにお風呂に入った。ここまでか今まであった事ね?
…うん、良し。頭の中で一応整理は出来た。



で、これはどういう事?



「……ちょっとシズちゃんこれ何」
「何って、寝る準備してんだよ」
「見りゃ分かるよ。…俺が聞いてるのは、何でベットに枕2つあるのって事なんだけど」
「寝るからに決まってんだろ」



何言ってんだお前、みたいな視線を送るシズちゃんを見て、思った。…こいつ馬鹿なんじゃないだろうかと。
何が悲しくて男2人が同じベットで寝るんだよ。しかもシングルとか!普通布団出すとかさあ…。
……思ったんだけどさ。俺、何律儀にシズちゃんの部屋に来ちゃってるの?別に良いじゃん戻らなくても。…うんよし、別の部屋で寝よう。



「…確か1階にソファあったよね?俺そこで寝るよ」
「何言ってんだ。あんな所で寝たら風邪ひくぞ」
「別に平気だよ」
「嘘吐け。そんなに丈夫じゃねえくせに何言ってんだ。ほら、さっさと寝んぞ」
「……」



…何で知ってんの?俺そんな事一言も言ってないのに。まあ風邪ひくのは嫌だけどさ。でもそれ以上にシズちゃんと一緒に寝るとか、…ほんと無理。



「…じゃあ幽君の部屋で寝る。そしたら風邪ひかないし」
「っな、」
「それじゃシズちゃんおやすみー」



…今日の事は幽君にも責任が有るんだし、これ位良いよね?なんて考えながら俺は部屋を出ようとした。…だけど、それは叶わなかった。


シズちゃんに腕を掴まれたから。



「…ちょっと。離してよシズちゃん」
「……嫌だ。幽のとこ行く気なら尚更な」
「…何なのほんと。今日のシズちゃんおかしいよ?」
「………ああ、そうだな。俺もお前も、な!」
「っわ!」



離して欲しくて思っていた事をそのまま言った俺を、あろう事かシズちゃんはベットに放り投げやがった。地味に痛いし!
それにムカついて、何か文句の一つでも言ってやろうと起き上がりかけた俺だが、素早く上から押さえつけられてしまった。


ほんと何なのさ。逃げる事も出来ないじゃないか。
…てか顔近いよシズちゃん。6センチ有るか無いかだよ。



「…何のつもり?」
「……臨也。話がある、」
「聞く事なんか何も無いよ。いいから離せよ!」
「…ちょっと黙ってろ」



反論する俺に、シズちゃんがさらに顔を近づけてきた。



…ちょっと、近、何っ……!?




―――目の前が暗くなると同時に、唇に何かか触れる感触がした。




……え?…シズちゃんに、キス、されて、る?



「…っんんんっ!?……ぷはっ!」
「…あーやっぱ唇荒れてるな。何時も舐めてるから気になってたんだよ」
「な、何言っんむ!?」



頭で理解出来たと同時に、慌て抵抗したら案外すんなりとシズちゃんは離れた。
それにホッとしたつかの間、耳に届く言葉。…今なんかとんでもない事言わなかった?
思わず何言ってるの、なんて言おうと口を開いたら、それを狙ってたかのようにまた口を塞がれた。



シズちゃんの舌が、俺の歯や歯茎を舐めたかと思えば、歯の裏側、上あご、下顎をぬるぬるとまるで軟体動物かのように舐めまわす。
そして俺の舌の裏筋をゆっくりと舐めあげてたと思えば、舌を深く絡めてきて。
…まるで口内を犯すかのように、ぐちゃぐちゃに舐めつくされる。

そのあまりの激しさに、唾液が俺の口の端から零れた。



どうして。何故。そんな言葉が頭の中でぐるぐるとまわる。
嫌なら相手の舌を噛めば良い。頭では分かってた。けれども、……どうしても、出来なかった。



や、だ。やだやだやだ!止めて、お願いだから!
―――俺はこんな気持ち、知りたくない!気付きたくない!!



そこまで考えた所で、ようやく解放された。
激しいキスで、息も絶え絶えな俺の額にシズちゃんはコツン、と額を合わせてから、今まで聞いた事無いような優しい声で話しかけてきた。



「なあ臨也。…俺、手前に言いたい事があんだよ」
「……っな、んだ、よ」
「好きだ」



―――頭がショートしたかと思った。



「何、いって、」
「好きなんだよ。ずっとずっと前から。手前が…臨也の事が、好きで仕方なかった」
「………う、」
「言っとくが嘘じゃねーよ。勘違いでも無い。…この気持ちを間違えるほど、俺は馬鹿じゃねえ」
「っ……」



……どうして。
どうして俺は、"嬉しい"なんて思ってるんだろうか…?
だって、有り得ないじゃないか。俺とシズちゃんだよ?仲が悪いはずなのに。…そう、それこそが真実なんだ。
…だからお願い。どうかこれ以上、俺を暴かないで――



「臨也…愛してる」



―ああ、だめ、分かってしまった―



知りたくなかったのに。知らないままで居たかったのに。


もう、逃げられない。


―――自分の本当の気持ちを、知ってしまったから。



「…シズ、ちゃ、」
「……何だ?」
「………………あ、のね……、」
「……無理すんな」
「…でも、」
「何時でも良い。どんな時でも、聞いてやるから。それにな…」



お前の気持ちは前から知ってたぜ、なんて耳元で囁かれて。



思わず、涙が零れた。



(言えなかった言葉は……"好き")





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