魔女ヒーロー | ナノ



休日と変化




泣きつかれて眠った後、私は眩しい朝日に迎えられて目を覚ました。携帯を見れば、夥しい数の着信とラインが入っている。私が襲われたことは既に消太さんからクラスメイトへと伝えられたようだ。さすがにこの量に返信を返すのは……、と思いながら、ふわりと携帯を浮かせる。それを宙で回転させながら、私はふ、と笑みをこぼした。

あの後、私は消太さんたちの話し合いにより、個性の無限使用が認められた。もう子供ではないのだから縛る必要もないと、消太さんが率先して制限を取っ払ってくれたのだ。私が敵に寝返らないための処置かもしれないが、これは大いにありがたいことだった。

ぐっと伸びをし、息を吐く。ようやく取れた心の蟠りにホッとしていれば、コンコンッとノック音が響いた。「はーい」と返事をすれば、看護師さんが入ってくる。

「神道さん。検査の時間ですよ」

「あ、はい。わかりました」

私はベッドから降り、看護師さんを追いかけた。

検査は比較的スムーズに行われた。特に異常がないとのことで、今日の夜には帰っても大丈夫らしい。
診察してくれた先生に感謝を告げ、病室へ。おじさまに連絡するべく携帯を取れば、再びコンコンッとノック音が響いた。なんだ、と思いながら返事をすれば、開かれたそこから見慣れたツートンカラーが入ってくる。

「え、轟くん……?」

「わり、寝てたか?」

「ううん。検査終わったとこ。轟くん、どうしてここに?」

「お母さんの見舞いに来てて、神道のことも気になったから来てみた。迷惑だったか?」

問われるそれに否定を返す。そんなことないと微笑めば、轟くんも安心したように笑みをこぼした。

「検査、どうだった?」

「うん。なんともないって。今日中には帰っても大丈夫らしいよ」

「送るか?」

「いや、さすがにおじさまが迎えに来てくれるから大丈夫大丈夫……」

あはは、と笑えば、「そうか」と轟くん。「なんか吹っ切れたみたいだな」という彼に、私はこくりとうなずいて見せる。

「うん。相澤先生のお陰で」

「そうか。良かったな」

「うん。まあ補習授業はちょっと怖いんだけどね……」

「自業自得だろ」

「うっ。それ言われちゃおしまいだよ……」

はぁ、と嘆息し、携帯をとった。浮かない顔でおじさまにラインを打ち、他はスルーして画面を消す。登校したら問い詰められるだろうが、こればかりは勘弁してもらいたいものだ。携帯を置き、近場の椅子に腰かけた轟くんへと視線を向けた。

「そういえば轟くん。改めて、昨日はありがとね。また助けられちゃったよ」

「いや。神道が無事で良かった。それに、俺はほぼなにもしてねえ。飛び出したのは爆豪だ」

「そうかな。勝己くんは確かに飛び出してきたけど、轟くんも氷結使ってくれたじゃん。なんか駆けつけたヒーローみたいでかっこよかったよ、あれ」

氷っていいよねぇ、と呑気に笑えば、轟くんは少し黙って口元に手を当てた。突然の動作に「どうかした? 吐きそう?」と問いかければ、轟くんは「いや……」と顔をあげる。

「神道って……」

「うん?」

「神道って、かわいいよな」

「……はい?」

呆ける私に、轟くんはもう一度「かわいいよな」と紡いでみせた。

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