人前ではNG
「失礼しまーす。姉さん、所長生きてますか?」
「死んでまーす」
あれから数時間。言霊の個性を用いホークスさんを眠らせた私。なんとか危機は回避できたものの、人の上ですやすやと寝息をたてるホークスさんに重い……、と思いながらその状態で暫く過ごした。個性で退かすことも考えたが、もう別にいっかと開き直り携帯を弄ることに専念した私を誰かバカだと罵ってくれ。
「おお、ほんとに寝てる。姉さんよくその状態で耐えましたね」
「いや全く……そろそろ起こしても大丈夫ですか?」
「そっすね。いい加減起きてもらわないと姉さんもホテル帰れないで困っちゃいますからね。所長。おーい。起きてください。所長ー」
ゆさゆさとホークスさんを揺らす相棒に勇気あるな……、なんて思っていれば、小さく呻いたホークスさんが目を開けた。そして、上体を起こした彼は真下にいる私を見て停止。ボスン、とまた舞い戻ってくる。
「所長!」
「もう少し……」
「離れたくないのはわかりますけど姉さんも困りますって! ホテル閉まったらどうするんすか!」
「俺の家で養う」
「あ、ならいいか」
「よくない!」
叫び、ぐいっとホークスさんを押す。
「ちょっとホークスさんしゃんとしてくださいよ! 私もうホテル戻りたいです! てか戦闘服のままだし!」
「あー、そか。着替えんといけんのか。カリンちゃんまだ学生さんやもんね。若いなぁ」
「言いながらまた寝ようとしないでくれません?」
ひくりと口を引きつらせれば、一拍の間を置きホークスさんが動いた。私の真横にある手に力を込め起き上がった彼は、その場に相棒がいるにも関わらず一度口づけを落としてくると、そのままソファーに座り欠伸を一つ。相棒がヒュー!、と口笛を吹く姿を気にすることもなく、「カリンちゃん、はよ着替えておいで」と私を見る。
「ホテルまでは送るけん、心配はいらんよ」
「……ホークスさん」
「なに?」
「……殺していいですか?」
震えながら口元を押さえ真っ赤になる私に、ホークスさんは一度瞠目した後、「なるほどねぇ」と頷くのだった。
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