魔女ヒーロー | ナノ



対決




「尾白くん、カリンちゃん。私ちょっと本気出すわ。手袋とブーツも脱ぐわ」

「それでいいの透ちゃん……」

完全な形で素っ裸になった透ちゃんに思わずそう声をかければ、「恥ずかしいからあんまり見ないでね!」と言われてしまった。いや、見ないでもなにも見えないのだが、そこはなにか言うべきなのだろうかと思いつつも「ああ、うん……」としか言葉が出ない。それは同じチームの尾白くんも同じようで、彼は気まずそうに頬をかきながら「そういえば神道さん」と私を呼んだ。

「ん?」

「葉隠さんは透明人間、俺はこの尻尾が個性だけど……神道さんの個性はなんなの?」

「あー、えっと……」

どうしよう、と考えて口を開いた。

「詳しいことは保護者に口止めされてるから言えないんだけど、まあ大体のことはできる個性と思ってくれてたら間違いないと思う。主にやるのは重力操作だけど……」

「なんて心強い……!」

「さすが特別推薦枠! 頼りになる!」

「いやまだ何もしてないけど……」

勝手に頼りにしないでくれと苦笑すれば、「でもほんと、カリンちゃんいると安心するよね!」と透ちゃんが言った。明るい彼女の言葉に、尾白くんもうんうん、と頷いている。褒め殺しか。なんだか気恥ずかしくなり、思わず視線を横へ。「あんまり期待はしない方がいいと思うけど……」と念を押しながら、作戦を立てていく。

今回の作戦はこうだ。私と尾白くんで核を守り、透ちゃんが奇襲という形でヒーロー組を確保する。もしも戦闘になった場合は、尾白くんが率先してヒーロー組と対峙。私が隙を見てテープを巻く。

今回、あくまで私はアシストに回るつもりだった。変に目立つのは避けたいし、なにより個性の乱用は控えたい。下手してバレたりしたら最悪だし、本音を言えば近接戦闘なんてやりたくない。つまるところ私のワガママが最大限に活かされた作戦なのである。

そんなことを知りもしない二人は、やる気が出てきたのか真面目な表情になっていた。ちょっと騙しているようで良心が痛むが、まあいいかと、各々指定の位置につく。

『それではスタート!!!』

開始の合図が鳴り響き、数分後。部屋の温度が下がり、壁やら床が凍ってきた。咄嗟に浮遊した私は、ついでとばかりに浮かせた尾白くんを凍り付いた床に戻しながら、白い息を小さく吐き出す。

「あ、ありがとう、神道さん……!」

「いーえ。それより尾白くん、来るよ」

その言葉と同時、核の部屋に轟くんが姿を表した。氷のマスクで片側を覆った彼は、こう言ってはなんだが非常に迫力がある出で立ちだ。尾白くんが飛びかかるのを尻目、私は宙へ。瞬間的に凍らされた尾白くんに変わるように、指先を振るう。

「ぐっ……!!?」

凍った壁に叩きつけられるように重力に押し潰される轟くんが、苦しげな顔をした。動けぬ彼を良いことに、即座にポーチから取り出した確保テープをその腕に巻き付けた私は、意外に呆気なく勝利したことに内心首を捻りながら個性を解く。

「っ……!」

ずるりと座り込んだ轟くんをよそ、無線機に手を当てる。

「透ちゃん。そっち大丈夫?」

『カリンちゃん! めちゃくちゃ寒いです!!』

「でしょうな。とりあえず轟くん確保したという報告だけしとくよ」

『ええ!? 確保したの!? カリンちゃんすごい!!!』

はしゃぐ透ちゃんに「障子くんどうしよっか?」と尾白くんを見ながら問いかける。二人も早くこの冷気の中から出たいのだろう。すぐに終わらせてほしいと願われた。

「了解。じゃ、障子くん確保してきまーす」

言って、浮いた私はそのまま障子くんの元へ。幸いにも透ちゃんの近くにいた彼を素早く拘束し、戦闘訓練を終了させた。

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