差し出された手
「恋人って、具体的にはなにをすればいいんですか?」
未だ現実に戻ってこないホークスさんを見上げ、こてん、と首を傾げる。そんな私に、ホークスさんを押し退けた三奈ちゃんと透ちゃんが「そりゃもちろん!」と声をあげた。
「手を繋いだり、抱き締めたり、キスしたりー!」
「ドキドキすることするんだよ!」
「私今操兎くんにならドキドキするけど……」
「そのクソ男は一旦頭から葬り去ってとりあえずホークスのことだけ考えよっか」
「ホークスさんのことだけ……」
はぁ、と頷けば、「先生」と轟くん。「俺はナンバーワンの息子だし恋人になるなら俺でもいいんじゃ……」と消太さんに掛け合う彼に、問われた消太さんは「お前じゃダメだよ」と返している。
「こういう場合は同い年より年上の方がいいんだ。相手に圧力をかけられる」
「じゃあ相澤先生でもいいってことですか?」
「俺はダメだ。人望も実績もない。それになにより、こんな三十路の親父より若いホークスのがいいだろ、神道的にも」
「いや私はどっちかというと消太さん派」
「カリンちゃん、俺泣いていい?」
どこまで俺から遠ざかりたいの、と訴えてくるホークスさんを冷たく見やり、思考を回す。手を繋ぎ、抱き締め、キスするのが恋人……。おかしいな。私たちそういうこと普通にしてるぞ……。
一人考え込む私に、消太さんがため息を一つ。私の頭を撫で「まあお前ならこの状況の意味をすぐ理解できるさ」と告げた彼に、首をかしげる。
状況の意味って……。
「とりあえず今日は暫く二人で過ごせ。恋人ごっこに慣れるんだ」
「恋人ごっこって……」
「はっ!」
「ホークス元気だな……」
言ってる間に、消太さんは寮から出ていった。残されたのはA組面々とおじさま、ホークスさんだけだ。
「ホークスくん。うちの子に変なことしたら許さないからね」
「わかってますって。しません。誓って」
「ならいいけど……」
カリンもなにかされたらすぐに言うんだよ?、というおじさまに頷けば、「もう! オールマイトさんは心配性なんですから!」とホークスさん。彼は私の肩を掴むと、「それじゃあ恋人らしいことしてきまーす!」と寮の外へ。「ぶっ殺す!!!」という勝己くんの声をBGMに、私の隣にさっと並ぶ。
「さ、行こっか」
笑顔で手を差し出してくる彼の手を、私は少し考え静かに掴んだ。
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