恋人設定
「誘拐の次は告白騒動。お前は落ち着くということを知らんのか、神道」
「私のせいじゃないですよー!」
消太さんがやって来た。飯田くんからある程度の説明は受けてるらしく、やって来て早々説教を垂れてくる消太さんにげんなりとする。私悪くないのに……。
落ち込む私を庇うように、クラスメイトたちがわらわらと前に出た。
「先生! 神道は悪くないですよ! 悪いのはその、操兎とかいう奴で……!」
「ああ、わかってる。だがな、恋心家ってのは国を揺るがす程の権力を持つ要人だ。そんなお家に目をつけられたとなれば、神道を解放するにはかなりの手間と時間がかかる。どういうつもりか知らんが個性まで使ってきたんだ。相手は本気だろうよ」
「じゃあ私お付き合いするしかないんですか!?」
「落ち着けアホ。手間と時間がかかると言ったろ」
ポンポンと頭を撫でられ、「消太さんんんん!!!」と彼に抱きつく。「おい離れろ」と言われたが知らない。離れるもんか。
そんな私の決意虚しく、首根っこを掴まれ後方へ引かれた。なんだなんだと振り返る私の視界、「ほんとにどうにか出来んだろーな」という勝己くんの姿が確認できた。どうやら私を引っ張ったのは彼らしい。隣に立たされ、解放される。
「ああ。……とりあえず、明日その男がここへ来るんだったら、あらかじめ用意しとかないとな。──ホークス」
「はい?」
「喜べ。今日明日限定で、お前は神道の恋人だ」
ぶっ!?、と出久くんが吹き出した。ついで「あ?」と眉をひそめた勝己くんの目がつり上がる。
「な、んでこの鳥男がこいつの恋人なんだよっ!!!」
「考えりゃわかるだろ。相手は神道に恋人がいないことを前提に迫って来てる。なら恋人を作りゃあいい。それも、今世を騒がすトップヒーローが恋人となりゃさすがの要人も簡単に手出しは出来ないはずだ。これでもホークスはヒーロー業界のナンバーツー。実績も人望もある男だ」
「認められるかクソがッ!!!」
「じゃあ神道を素性もよくわからんような男に取られていいんだな?」
ぐっ、と勝己くんが押し黙った。わなわなと怒りに震える彼を尻目に、「でもホークスさんお忙しい方ですし、迷惑なんじゃ……」と片手をあげる。それに、「大丈夫だ」と返した消太さんは、ホークスさんを見て「だろ?」と一言。
「え? イレイザーヘッドさんに一生着いてくって話ですっけ?」
「おいホークス動揺してんぞ」
「よっぽどカリンちゃんの恋人になれる確率が低いと思ってたんでしょうね」
「まあ年の差あるしなぁ」
「ちょっとそこ年の差は言わない約束」
プロヒーロー相手にも容赦ないクラスメイトたちに小さく笑い、私は視線を下へ。ホークスさんと恋人、という設定に、一人静かに拳を握った。
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