第二セット
作戦会議も終わり、第二セットが始まる。それと同時に黒影を放った常闇くんが、皆を誘導するように駆け出した。作戦や推測についての疑いはないのか、真っ直ぐに前を見る彼に、なんだかむず痒い気持ちを覚える。
「見つけたようだ。あの一際高く聳える煙突の下手前」
足を止めた常闇くんにならい皆も走行を停止。来る黒色くんに構えをとる。
「! 来るぞ!」
常闇くんの声と同じくして、黒影が常闇くんを襲った。彼の腹にいっさい重い攻撃を喰らわせた黒影の中からは、すぐに目的の人物が現れる。私はすかさず指を鳴らし、落ちかけた黒色くんを出現させた黒い外套で包み込んだ。それをガラスで塞ぎ、手元に寄せ、にまりと笑う。
「黒色くん捕獲」
パッとテレポートで牢に飛ばし、常闇くんの傍へ。「大丈夫?」と声をかければ、「問題ない」と頷かれた。
「しかし、神道の言ったとおりだったな」
「ええ、まさか黒影を操るとは……」
「こっからが本番。皆気合い入れてね。青山くん。ネビルビュッフェを」
「ウィ☆」
青山くんが個性を発動する。眩い光が周囲を照らす中、少し待っていればぽん、と音をたてて腕にきのこが生えた。すぐに滅菌スプレーで体を無菌状態にし、周囲を覆うきのこ郡を一瞥。「これも推測どおり……」と呟く透ちゃんに苦笑する。
「予想が正しければ次は吹出くん。百ちゃんを分断するはず。常闇くん、サーモグラフゴーグルつけといて」
「御意」
頷いた常闇くんがゴーグルをつけると同時、吹出くんの個性が出現。予想通り百ちゃんと私たちとを分断し、沈黙する。一応と青山くんができた壁に向かってレーザーを放つが、傷ひとつつかなかった。
「よし、予想通り。じゃあ、きのこちゃんと吹出くんは任せた」
「任せろ!」
「八百万のことは頼んだぞ」
「僕の出番☆」
「ういっす」
敬礼し、テレポートで百ちゃんの元へ。丁度彼女に飛びかかろうとしていた拳藤さんを見つけ、すぐさま重力を展開。拳藤さんを地面に叩きつける。
「いっ!?」
「カリンさん!」
私の名を呼んだ百ちゃんに片手をあげ、地面に着地。腰元のリングを一つ手に取り、それを巨大化させて被せるように拳藤さんの上に落とす。
ヴン。音をたて、拳藤さんが消えた。テレポートで牢に飛んだであろう彼女を思いながら、私は百ちゃんに歩み寄る。
「……ここまで、カリンさんのオペレーション通りですわね」
「そうだね。予想は概ね合ってたみたい」
周囲を見回しながら、リングを腰元へ。元の位置に戻し、百ちゃんを見る。
「んじゃ、私らも行こっか」
「はい」
片手を差し出せば、百ちゃんは頷きその手をとった。瞬間、テレポートで飛んだ私たちは吹出くんの頭上へ。丁度透ちゃんと青山くんの猛攻を受けていた彼に二人して乗っかることになる。
「うおー!? カリンちゃん! ヤオモモ! そっち終わったの!?」
「ええ、カリンさんがすぐに終わらせてくださいましたわ」
「ちょっ、百ちゃん吹出くん潰れてる潰れてる!」
「あら?」
あら、ってこの子は……。
目を回す吹出くんを百ちゃんの出したロープで拘束すれば、共に真横の通路から常闇くんが現れる。気絶したきのこちゃんを抱える常闇くんは、こちらの様子を確認するとグッと親指をたてていた。
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