魔女ヒーロー | ナノ



第一セット




A組対B組。最初の試合が早速と行われる。参加しないメンバーは外に設置されたモニター画面で参加中メンバーの様子を確認していた。

「心操くんどう動くかな……」

「ワクワクするねえ!」

透ちゃんと並んでモニターを見れば、擬態化した梅雨ちゃんが壁を這っている様子が確認できた。保護色わかれば見えるもんだな、と呑気に考えていれば、B組で塩崎さんが動いているのがわかる。塩崎さんはツルを利用し、周囲を探っているようだ。それに合わせ、他の面々も動いている。
まず先攻して動いたのはB組の宍田くんだった。彼は梅雨ちゃんと切島くんを吹き飛ばし、上鳴くんを狙う。「よっしゃ蹴散らせ宍田!!!」の声に、宍田くんが「任されましたぞぉおおお!!!」と叫ぶ。

「お疲れさまでしたぁああああ!!!」

上鳴くんが絶望に叫ぶと同時、宍田くんの動きが停止した。しん、と沈黙する彼に、心操くんが動いたことを察する。

「あのマスク!」

「心操やるぅ!」

変声機か、と納得。が、画面内の心操くんはすぐに円場くんにより捕獲されており、それ以上の行動は期待できなかった。

「暴れろ!」

円場くんにより再び動き出した宍田くんが、上鳴くんを振り払う。電撃を受けながらのそれに驚きつつも彼を見やれば、多少なりとも攻撃は効いているようだ。「ぐっ」と低い声を発している。
その間にジャンプ体制の円場くんを梅雨ちゃんが捕獲。そのまま牢へと走っていく彼女を、痺れているはずの宍田くんが追った。

「小さき者どもよ。御力を貸したまえ!」

「烈怒頑斗裂屠!!」

それを阻止しようと口田くんと切島くんが宍田くんの目の前へ。しかし宍田くんは人モードになりこれを避けると、再びビースト化。構える切島くんと口田くんをわし掴む。

「私の力に対抗できるのは切島氏くらいでしょう! だぁかぁらぁ!!」

ひょーい、と放り投げられる切島くん。待ち構えていた塩崎さんにより捕獲された彼は、そのまま牢へと連行される。
口田くんは口田くんで暴れまわるものの、宍田くんの機転により先に牢へと直行。彼も捕獲されて一時戦闘は終了した。

「早くも削り合い! 宍田、円場の荒らしが覿面!! これは! 残人数は同じでも精神的余裕はB組にありか!? 我が教え子の猛撃が遂に! A組を打ち砕くのか!?」

「偏向実況やめろー!」

荒ぶるブラドキング先生を横目、「宍田くん強いね……」と告げる透ちゃんに頷く。
確かに、ビーストの個性は強力だった。力もありスピードもある。鼻も効く。かなりの強個性だ。それなりの個性でなければ太刀打ちするのは難しいだろう。

「カリンちゃんならどうする?」

「私なら?」

そうだなぁ、と考え、一言。

「飛ばす」

「飛ばす……」

透ちゃんは不思議そうだった。

「蛙吹氏が3人、向かってきている!!」

と、モニターに変化が起きた。宍田くんが奇妙なことを口走り出したのだ。だが、画面を見ても梅雨ちゃんは一人。恐らく彼女の匂いを上書きしたのだろうと思われるが、場は混乱状態だ。

「さすが蛙吹さん。機転がききますわね」

「ね」

百ちゃんと透ちゃんの会話を耳に画面を見やれば、ツルを展開した塩崎さんに上鳴くんが捕獲されていた。電撃を避けるためか幾層ものツルで上鳴くんを封じた塩崎さんは、「次だ! 早くツル張り直せ!」という鱗くんの声に返事を返す。だが……。

「おい!? 今のは俺の声じゃねえよ!!」

どうやら先のは心操くんの声だったようだ。洗脳にかかった塩崎さんが停止する。その間に宍田くんは駆け出しており、梅雨ちゃんが塩崎さんを高い位置に隠して潜んだ。それに鱗くんが反応し宍田くんに声をかけるも、応答はなし。疑心暗鬼になっているのか喋らない宍田くんに、コミュニケーションが取れていないことを察する。

「おい、心操やべーだろ。ハンデになってねーだろ」

「いや……蛙吹さんと上鳴くんの機転で心操くんが活きた……! すごい……」

そのまま鱗くんと宍田くん、塩崎さんは捕獲され、第一セットは終了した。ブラドキング先生が悔しそうにA組の勝利を告げている。

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